第八話

 個人的な好みで言うと、私は行列が嫌いです。並んで待たなければ得られないものは、この世に存在しないと考えていますが、どうも世の中、そうではないらしい。

行列のできる店
 個人的な好悪は度外視して、世間には行列のできる店があります。なぜ行列ができるのか。その店が販売している商品が買いたいからです。その商品がどうしても欲しいから、並んで待ってでも「買う」のです。と言うことは、「買い手」に、時間と労力をかけても買いたくさせるのは「売り物」です。「売り物」を「買う」ために、「買い手」は、行列してでも「買う」のです。「売り手」にすれば、こんな有難い商売は無い。「売り物」がドンドン「売れる」のですから。
 私は高校生の時、漢文の授業で「桃李(とうり)もの言わねど 下 自ずから 蹊(けい)を成す」というコトバを教わりました。桃も李(すもも)も、ものを言わないけれど(当たり前ですが)、桃や李の花や実を求めて、沢山の人が、桃李の木の下(もと)を訪れるので、自然に道が出来る、という意味です。今の私には、商売の極意に思えます。桃李は店舗、花や実が商品です。


第一話 How to do the AKINAI 第二話 鶏卵論争
第三話 シャッター街 第四話 街づくりは店づくりから
第五話 明日は我が身 第六話 必要は発明の母
第七話 「売る」と「売れる」 第八話 行列のできる店
第九話 「買う」とは何か、何を「買う」のか 第十話 「買わない」理由(わけ)は二通り
第十一話 「買わない」と「買えない」 第十二話 経世済民
第十三話 「出来ること」と「出来ないこと」 第十四話 なぜ変わるのか
第十五話 戦前・戦後 第十六話 「三種の神器」と「3C」
第十七話 コレクターという人種 第十八話 一億総中流社会
第十九話 三ダケ主義 第二十話 バブル経済
第二十一話 震災前・震災後 第二十二話 価値観の大転換
第二十三話 死語 第二十四話 断捨離
第二十五話 オーナ-派・レンタル派・リサイクル派 第二十六話 ツクル・ツカウ・ツナグ
第二十七話 モノ消費とコト消費 第二十八話 時間と空間
第二十九話 コナス 第三十話 目指せ、コナシの達人
第三十一話 SNS 第三十二話 WI作戦
第三十三話 需要と供給 第三十四話 時代を読む
第三十五話 大型ショッピングモール 第三十六話 街の○○屋
第三十七話 金太郎飴 第三十八話 人間力
第三十九話 老舗の力 第四十話 「商の道」は「人の道」