第三十話

 ビデオテープレコーダーが普及し始めた頃、テレビの番組を好きなだけ録画できるのだ、と喜び勇んで購入したのですが、何度やっても番組予約ができなくて諦めて、以来、新種の機械は買わなくなりました。

目指せ、コナシの達人
 どんなにスゴイ機械でも、使えなかったらただの粗大ごみ。使ってこそ、自由に使いこなせてこそ本領発揮するのです。今までなかったような最新機器ならなおさら、使用説明書を読むなり、人から教わったりして、初めて使いこなせるようになる。パソコンが普及し始めた頃、あちこちにパソコン教室が出来ましたが、私なんぞは、今はやりのスマートフォンを老若男女が喜々として使っているのを見て、唯々、驚嘆しているのですが、どうもスマートフォンを販売しているショップで教室も開いているらしい。
 以前から楽器屋さんがピアノ教室やバイオリン教室をされているのは多いですが、折角、お客様に高価なピアノを購入して頂いても、弾きこなせて頂かないことには、次の商売に繋がらない。呉服屋も、お客様が自分ひとりで着物が着られるようなって頂かないことには、着物の販売はままならないです。弊店も着付け教室を開催していますが、お陰様で好評です。
 日本人の価値観が劇的に変化し、「使用価値」が重要になった今、私たち小売業者に求められているのは「コナシの提案」だと思うのです。お買い求めいただいた「モノ」を、より価値ある「モノ」として使いこなして頂く、着こなして頂くお手伝いを、親切丁寧にさせて頂くことが、新たな商機を生むのです。お客様が、「コナシの達人」になられるように、私たちは、「コナシのアドバイザー」になりましょう。