第三十九話

 「元町商店街も変わりましたね」と寂しそうにおっしゃる方もいらっしゃいますが、今でも古くから商売を続けて来られたお店が何軒もあります。

老舗の力
 令和2年、弊店は創業120周年を迎えました。長きにわたって商売を続けることが出来ましたのは、お客様のご愛顧、取引先のご支援の賜物とあらためて感謝申し上げる次第です。私が入社いたしましたのは50年ほど前になりますが、以来今日まで、オイルショック、バブル経済崩壊、阪神淡路大震災、金融不安、リーマンショック等々、厳しい状況が何度もあり、決して順調に商売を続けて来られたわけではありません。しかし今日まで、なんとか無事に営業を継続できましたのは、「老舗の力」があったからではないかと考えます。
 明治33年、湊川神社の西、有馬道で祖父が創業し、父、母、私と受け継いだ呉服業を、令和2年、息子が承継いたしました。さして商売に有能ではない私が、店を潰さず代替わりが出来ましたのは、三代にわたって受け継がれた店の「ジバン(地盤)カンバン(看板)カバン(鞄)」があったからではなかったかと思うのです。とりわけ昭和29年に神戸元町商店街の現在地に店舗を構えることが出来たのは、他の何ものにも代えがたい「老舗の力」を与えられたことでしょう。これから更に厳しい商環境にさらされると覚悟しておりますが、「老舗の力」を活かして今後とも努力を続けてまいります。