第三十五話

 俗に「山あり谷あり」と言うけれど、零細小売業者である私の実感は、「谷あり谷あり」でした。

大型ショッピングモール
 滅多に旅行に出かけない私が、偶に旅行めいたことをして驚くのは、今どき、どこに行っても、街のどこかに大型ショッピングモールがあって、食料品から衣料品、家電製品などなど、生活必需品のほとんどすべてが、豊富に品揃えしてある。零細小売業者である私は、ついつい地元の商店は、商売、大変だろうな、と心配してしまうのです。平成12年、大規模小売店舗法(大店法)が廃止され、店舗面積、営業時間が大幅に緩和されて、日本国中、ありとあらゆるところ、いたるところに大型ショッピングモールが出現して、商店街、小売市場の商店は、一挙に苦境に陥ったのです。
 商店街は元来、洋服、呉服、靴、カバン、家具、文具、電器製品などなど、小売市場は、肉、魚、野菜、果物、麺類、お菓子などなど、色々な商品を販売する店が軒を並べていて、商店街や小売市場に買い物に出かけると、ほぼ必要なものが購入できました。ところが大店法が廃止され、零細小売業者が大規模店に圧倒され、駆逐され、商店街、小売市場から、商店が消えていくと、商店街、小売市場で買えない商品が出てきて、お客様の足が遠のいて、さらに商店が欠けていって、気が付いたら「街の○○屋」さんがなくなってしまった。「時代の流れ」と言ってしまえば、それまでですが、このまま「街の○○屋」さが無くなってしまって良いのでしょうか。