第十三話

 一体全体、世の中、どないなっとんね。なんで我々小商人が、売れへん、売れへん、とボヤかなあかんね。責任者、出てこい!と、その昔、人気絶頂だった夫婦漫才の人生幸朗、生恵幸子なら、舞台でボヤいて、きっと拍手喝采でしょう。

「出来ること」と「出来ないこと」
 現在、私たち零細小売業者が、苦境に陥っている最大の原因は、現下の社会状況、経済情勢にある、と言って過言ではありません。だからと言って、私たちに何が出来るか。世間が悪いとボヤいても始まらない。精々、選挙で一票を投じることぐらいです。景気を好転させるなどということは、土台、私たちに「出来ること」ではありません。しかし、自分の商売を好転させることは、私たちにも「出来ること」です。自営業は自衛業です。自分の商売は自分で衛(まもる)しかない。自分には「出来ないこと」もあるけれど、自分にしか「出来ないこと」もある。自分の商売を自分で衛(まもる)ことは、厳しい、難しいけれど、自分で「出来ること」なのです。やるしかない!
 何から始めるか。考えることです。私は家業の呉服屋になって以来ずっと、商売について考え続けてきました。商売について考え続けて痛感するのは、時代は変わる、変り続けていることです。私の見るところ、良い方に変わる場合もあれば、悪い方に変っていく場合もある。良かれ悪しかれ、世の中、ドンドン変わり続けているのです。なぜ、時代は変わるのか。それは、それなりの理由、それなりの条件があるでしょう。良い方へ変えていこうとする努力は、当然、必要ですし、悪い方へ変わっていこうとするのを阻止することも、重要でしょう。そのためには、なぜ時代は変わるのかの理由、条件を知ることが大事です。そのためにも、先ず、どう時代が変わっているのかに気づくことが大切です。