第十話

 なんでこんなに「売れない」のか日々思案に暮れる我々商売人ですが、お客様が「買わない」理由(わけ)があるのです。

「買わない」理由(わけ)は二通り
 「買い手」が「買わない」理由(わけ)は二通りあります。先ず、「買い手」は、欲しくないモノは「買わない」。当たり前です。例えば、呉服屋である私の場合、キモノに全く関心の無い「買い手」は、キモノを「買わない」。しかし、欲しいけれど「買わない」場合もある。キモノは欲しい。だけど、自分一人では着られないから「買わない」。キモノを着ていくチャンスがないから「買わない」。
 「買わない」消費者を経済学の専門用語?では「無消費者」と言うそうですが、「無消費者」ばっかりだったら、商売あがったりです。「売れる」ようにするためには、「無消費者」を「消費者」に変えなければならない。はたしてそんなことが出来るのだろうか。それを考えるのが「商道(あきないみち)」を書く目的です。
 などとエラそうに言って、私が出来ているわけでは毛頭ありません。出来ていたら「商道(あきないみち)」を書きだしません。出来ていないから、どうしたら出来るのかを考えているのです。例えば、呉服屋である私の場合、キモノは欲しい、だけど、自分一人では着られないから「買わない」のであれば、一人でキモノが着られるようにするお手伝い、きもの着付け教室をやってみるとか、キモノを着ていくチャンスがないから「買わない」のであれば、キモノで集うお食事会をやってみるとか、キモノ「無消費者」をキモノ「消費者」に変える手立てがあるのではないか、と考えてみるのです。