第十八話

 弊店は戦前、湊川神社の西の有馬道に店が在りました。しかし空襲で焼け出され、戦後、高架下の闇市から再出発しました。

一億総中流社会
 太平洋戦争の敗戦で、多くの日本人はすべてを失いました。まさに限りなく零から再出発したのです。何もかも無くなって、何もかも買わなければならなかったので、再開した商店の商品はドンドン売れました。高架下の闇市から再出発した弊店も、「右から左に飛ぶように売れた」と母は懐かしそうに話してくれました。「所得倍増計画」で購買力を身に付けた日本人は、「衣食住」の生活必需品の購入に始まって、「三種の神器」や「3C」と、次第に贅沢品を購入するようになりました。消費者の旺盛な消費意欲に応えるために、新商品の開発、生産の拡大が進み、日本経済は右肩上がりの活況を呈したのです。
 戦後の奇跡的な経済復興は、日本人の勤勉さ、実直さ、不屈の努力の結果でした。外国人から「エコノミック・アニマル」と揶揄されようと、モーレツ社員となって世界中に優秀な国産品を販売し、日本企業に多大な利益をもたらし、会社員に給与として分配されました。その結果、日本人の平均所得は増え続け、「一億総中流社会」が実現したのです。しかし成功体験は、日本人から謙虚さを奪いました。「ジャパン アズ ナンバーワン」とおだてられ驕り高ぶったのです。身の丈を忘れ、分不相応の投資に走った結果、バブル経済が発生し、文字通り、泡の如く崩壊したのです。


第一話 How to do the AKINAI 第二話 鶏卵論争
第三話 シャッター街 第四話 街づくりは店づくりから
第五話 明日は我が身 第六話 必要は発明の母
第七話 「売る」と「売れる」 第八話 行列のできる店
第九話 「買う」とは何か、何を「買う」のか 第十話 「買わない」理由(わけ)は二通り
第十一話 「買わない」と「買えない」 第十二話 経世済民
第十三話 「出来ること」と「出来ないこと」 第十四話 なぜ変わるのか
第十五話 戦前・戦後 第十六話 「三種の神器」と「3C」
第十七話 コレクターという人種 第十八話 一億総中流社会
第十九話 三ダケ主義 第二十話 バブル経済
第二十一話 震災前・震災後 第二十二話 価値観の大転換
第二十三話 死語 第二十四話 断捨離
第二十五話 オーナ-派・レンタル派・リサイクル派 第二十六話 ツクル・ツカウ・ツナグ
第二十七話 モノ消費とコト消費 第二十八話 時間と空間
第二十九話 コナス 第三十話 目指せ、コナシの達人
第三十一話 SNS 第三十二話 WI作戦
第三十三話 需要と供給 第三十四話 時代を読む
第三十五話 大型ショッピングモール 第三十六話 街の○○屋
第三十七話 金太郎飴 第三十八話 人間力
第三十九話 老舗の力 第四十話 「商の道」は「人の道」