「まつり文化」から「くらし文化」へ

 「まるたやフレンドリーコンサート」を始めたのも、続けてきたのも、私の商売のため、私の趣味のため、であることは事実その通りです。しかし、格好をつけるわけでもなく、気負って言うわけでもなく、私は、「まるたやフレンドリーコンサート」を、文化のために、社会のために、継続しているのです。なぜなら、文化を守り育てることが、社会を住み良く暮らし易くすることに繋がるからであり、社会が住み良く暮らし易くて、はじめて、私の商売が堅調になり、人生が充実するからです。
 翻って、現状は、どうでしょう。文化の実りが社会を豊かにしているのでしょうか。一見、到るところで華やかな文化事業が催されています。しかし、文化とは何か、をあらためて問い直すと、はたして文化は本当に社会に定着しているのでしょうか。私は、はなはだ疑問に感じるのです。
 では、文化とは何か。100人に問うと、きっと、100通りの答えが返ってくるでしょう。私は、心豊かな暮らしこそ文化だ、と考えます。衣・食・住、という言葉で端的に表現しうる生活、その日々の暮らしが、今よりも、より豊かであることが文化だ、と思うのです。より美しく、より心地よい衣服、より健やかで、より味わい深い食事、より穏やかで、心安らぐ住居、いわば、生活の質の向上こそ文化だと。
 心豊かな暮らしこそ文化だ、という観点に立つと、一見、華やかな文化事業が、はたして、生活の質の向上に繋がっているのだろうか、と疑問に思えるのです。一点豪華主義のような、一発花火的な文化事業によって、一体、どれほど、一人ひとりの生活、とりわけ、精神生活が豊かになるのだろう。
 お祭り騒ぎの「まつり文化」ではなく、本当に大切なのは、1年365日、1日24時間が、昨日より今日が、今日よりも明日が、より豊かで実りある人生になるような「くらし文化」ではないか。「まつり文化」の派手さも、豪華さもない。地味で、貧弱かもしれない。しかし、しっかり地に足の着いた、地道な積み重ねの中から生まれ育ってくる「くらし文化」こそ、私たちは大切にしなければならないではないでしょうか。