夢 の 続 き
 初めて、そのスカーフを眼にしたとき、なんと柔らかな優しい色、と心ひかれました。そのスカーフを染められた長田けい子さんに、初めてお会いしたとき、柔らかで優しい色は、この方の心の色なのだ、と分かりました。最初に弊店で個展を開いていただき、ブラウスやドレス、タペストリーやテーブルセンターを見せていただいて、たおやかさのなかにしっかりと芯があるのに気づかされたとき、その強靭さも長田けい子さんの人柄のなかに秘められていることを知りました。
 花が好きで、京都の植物園に行っては写生を繰り返されたこと、友禅工房で手描き友禅の修業を続けられたこと、など聞かせていただいて、その色が長田けい子さんの心の色に染まるようになるまでに、どれほどの時が積み重ねられたかを推し量ることは出来ませんが、測り知れない努力を重ねてこられたであろうことは、その色のえも言えぬ美しさが何より語りかけています。
 1994年4月、初個展「パステル色に花ひらいて」から7ヵ月後、「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の第2回目の発表会に、長田けい子さんに「花につつまれたバイオリン」としてオリジナルのブラウスやスカーフを作っていただきました。長田さんが描く慎ましくも美しい花につつまれて、バイオリンが、ピアノが幸せそうに微笑んでいました。その華やかな発表会の直後、神戸の街を破壊し尽くした地震が襲うとは、そのとき知る由もありませんでした。
 震災の2ヵ月後、「丸太やオリジナルコレクションコンサート」を東京で発表する機会にめぐり合いました。是非、長田けい子さんに新作を、とお願いして、東京に出発するその日、京都で途中下車して、京都駅の地下のコーヒーショップで待ち合わせをし、長田さんから新作を預かりました。東京の会場で、その作品は大好評で完売することが出来たのですが、私には「丸太やさん、どうか震災の惨禍に負けないでがんばってください」というメッセージがこめられていると強く感じました。
 あれから9年が経とうとしています。春、秋、恒例になった「丸太やフレンドリーコンサート」の会期にあわせて、長田けい子さんに「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の新作を発表していただきました。スカーフやブラウス、タペストリーやテーブルセンターから始まって、きものや帯も生まれました。振袖、訪問着、染め帯、どれほどたくさんのお客様が長田けい子さんの「夢をかさ音」た色にくるまれて幸せな思いをお持ちいただけたことでしょう。「夢のつづき」を見続けたいものです。