「織物の良し悪しって、つくる人間の人格なんだ」
昨年夏に横山俊一郎さんのお宅を訪問させていただいた際、横山さんが織物について話してくださった言葉です。
 横山さんのものづくりは、自然の中で生きることがその土台となっています。みさやま紬は、胡桃や山漆など、全て草木で染められていますが、横山さんは、「自然から色を頂く」と言っておられました。その謙虚な姿勢が織にも表れています。自然から与えられるものを、自然と共に生きる生活を、率直に、あるがままに、かたちにする。だからみさやま紬は、素朴で、あたたかくて、やさしくて、私たちの生活にそっと寄り添ってくれる紬なのだと思います。
 僕の母が最初に自分で選んで買った着物がみさやま紬だったそうです。そのときからみさやま紬はずっと母の生活と共にありました。母は最近「みさやま紬は私の年齢と一緒に落ち着いた風合いに変わってきた」とよく言っています。生地はしなやかに、色はまろやかに。人が年齢を重ねて変わってゆくように、みさやま紬もまた、その人と共に変わってゆくのです。みさやま紬は、何よりそこを楽しんで味わっていただきたいと思います。
 自然から得られた色は、一つの色の中にも多様な世界を秘めています。それは着物の包容力として表れます。みさやま紬は染めの帯も織の帯も、しっかりと受け入れてくれます。この案内状のために写真を撮影しましたが、みさやま紬に帯を合わせると、どの帯もしっとりと収まるのです。この着物はこんな風にもあんな風にも着られるなぁと想像しながら写真を撮るのは、とても楽しいものでした。みさやま紬は皆様の着物の楽しみの幅を、ぐんと広げてくれる着物です。
三木 弦