丸太やロゴ

 美味しいお店のご紹介、ということですが、何を美味しいとするかは驚くほど個人差があります。「おすすめ」とは「私のお気に入り」という程度の意味で、それ以上ではまったくありません。ただ、誰しもそうでしょうが、身銭を切って、不味いものは食べたくはありません。「私のお気に入り」というぐらいですから、少なくとも私にとってはとても美味しい。ということは、そのお店でしばしば飲食をしている、ということです。その条件は、美味しい、高くない、近い、ということです。「安近旨(あんきんし)」、安い、近い、旨い、ということを、こう言うかどうか知りませんが、そういうお店のご紹介です。
赤萬(餃子) イスズベーカリー(パン) エビアン(コーヒー)
ジャムジャム(ジャズ喫茶) ユーハイム本店(洋菓子) 劉家荘(中華料理)
京屋(うどん) つたや(ラーメン) カルボ(スパゲッティ)
サンワフルーツ(フルーツ) (和・洋菓子) カフェテラス ウインドワード(喫茶)
老祥紀(ぶたまん) つるてん西店(そば) 喜八(食堂)


赤萬
 閉店30分前、「餃子、買って帰ろうか」と家内に声を掛け「すみません、10人前お願いします」と赤萬に電話をします。「ゴメンナサイ、今日は売り切れました」ということもときどきありますが、運良く買えると強烈な匂いが食欲を刺激します。焼きたてが美味しいのは何でもそうですが、家で焼くと、とてもあのこんがりとして、しかもしっとりとした焼き加減は不可能で「焼いておいてください」とお願いします。何度食べても食べ飽きがしないです。


イスズベーカリー
 イススベーカリーの先代の奥様は、私がまだ駆け出しの頃のお客様です。加納町3丁目交差点の東南角の本社ビルにお住まいでした。商品を持ってお伺いすると、ご主人が「丸太やさんやで」と声をかけてくださって「お兄ちゃん、来てくれたん」と出てきてくださいます。商品を広げてお見せすると「綺麗やね」とおっしゃってくださって「ごめん、今日は買えへん」と申し訳なさそうにお断りになられます。 今、思い返すと、当時はイスズベーカリーがどんどん大きくなっていた頃で、ご夫婦とも大変お忙しかったことと思われます。なのに、勝手に押しかけてくる呉服屋に丁寧に応対してくださった。工場でもある本社ビルにはたくさんの従業員が働いておられ、奥様は社員食堂の賄いもされておられました。前掛けを当てて食堂に立っておられるところにお邪魔したことも度々あります。頭が下がる思いがいたしました。 ご夫婦は趣味で日舞をされておられました。発表会のご案内を頂き何度か母も一緒に舞台を拝見いたしました。失礼な申しようですが普段の奥様とは別人のような凛々しい晴れ姿です。母も一緒に拝見することをとても喜んでくださって丁寧な礼状を頂戴しました。賀状も毎年頂戴しました。 「ウチの山食は美味しいよ」とおっしゃっておられました。最近、弊店の目と鼻の先にイスズベーカリーが店を出しました。本当に奥様のおっしゃっていた通りです。とりわけ「元町ビーフカレーパン」は絶品で、とくに出来たてに当たると最高です。奥様の優しい笑顔が浮かびます。


エビアン
 元町の、否、神戸の、否、日本を代表するコーヒーショップです。コーヒーショップの草分け的存在のお店。私の記憶の残る以前からお店があります。まだほんの子供の頃、父だったか叔父だったかに連れてもらってお店に入りました。ちょっと大人になった気分がしました。その頃も、今もちっとも変わらない。店で豆を煎り、サイフォンで淹れる、そのコーヒーの香と味わい。


ジャムジャム
 大学生の頃、ジャズを聞くようになりました、友人に勧められて。当時、ジャズ喫茶が全盛で、あっちこっちにジャズ喫茶がありました。下宿のすぐそばにもあって、コーヒーは贅沢だったから、焼きうどんを食べながらジャズを聞いていました。今、思い返すと不思議なほど暗い学生生活で、しょっちゅう落ち込んでいました。焼きうどんを食べながらジャズを聞いているとその暗い気分にピッタリで少し元気になれました。ただ黙っているだけのマスターとの会話の無い会話に救われました。ジャムジャムはあの頃のジャズ喫茶を思い出させてくれます。


ユーハイム本店
 バウムクーヘン(木のお菓子)で有名なユーハイムの本店が弊店の真向かいにあります。1階は木の年輪のようなお菓子、バウムクーヘンをはじめとする銘菓が販売されています。弊店のおすすめはアッフェルバウム、リンゴを丸ままバウムクーヘンで包んだお菓子で、手土産の定番です。地階はレストラン、お昼のランチメニューはほどよく食事が出来ます。2階は喫茶室で、ゆっくり、ゆったりしていて落ち着けます。3階はパーティー会場で弊店が「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の発表のおりには「きもので集うワインコンサート」の会場でした。


劉家荘
 弊店に一番近い中華料理店、というのが理由ではありません。美味しくて安い(安くて美味しい、ではありません、念のため)から、しばしばお昼を食べに行きます。お気に入りは野菜がいっぱいの五目汁ソバ。特に冬場は身体が真底温かくなります。夜のコースはこの予算でこれほどの中味、と感動します。決して大きなお店ではありませから団体で、というわけにはいかないのですが、家族みんなで、とか、仲間内で、というのであれば盛り上がること間違いなし。オーナーの劉繕雲君は地域活動にも積極的に取り組む好青年です。追記、ご自慢は鳥料理です。


京屋
 「うどんの力」は大したものだ。「力うどん」でなくても。それは科学的に証明されていて、消化吸収が良くて、体内ですぐにエネルギーに転化する、そうです。(という話をテレビで見た記憶があります)。実際、そうだと思う。今日は、なんか元気が出ないな、というときはうどんを食べに行きます。京屋へ。すると不思議や不思議、元気になる。これ、本当。京屋のうどんは太目の手打ちで、私はボリュームたっぷりの「ミニ玉丼セット」がお気に入りですが、家内はあっさり「卵とじうどん」。お蕎麦も美味しくて、娘は「カツ蕎麦」というトンカツ入りのお蕎麦が好物です。メニューはその他大勢。


つたや
 日本人の食生活の中でラーメンは確固とした地位を固めている。平たく言うと日本人はラーメンが大好きだ。今日の昼はラーメンにしようと決めたら「つたや」へ直行。野菜ラーメンがお気に入りでどんぶり鉢いっぱいの野菜をボリボリしっかり噛み砕いて食べます。早食いの私でもしっかり噛まないと食べられないので健康に良さそう。と思ったら「兵庫県の健康に良い食品に選ばれました」とにこやかに店主がおっしゃいました。ヘルシー最高。


カルボ
 カルボはイタリア料理のお店です。夫婦仲良くお客様に本当に美味しい料理を食べて頂こう、と一生懸命努力されている健気な姿勢が大好きです。お昼はパスタランチ、日替わりで季節の食材が生かされています。スパイスが絶妙でこれは真似ができないです。夜のディナーコースもなかなかで、限られた予算でしっとりと贅沢な気分を満喫したい方にはピッタリです。神戸元町の雰囲気にお似合いのお店です。


サンワフルーツ
 子どもの頃、店に出ていた母が買って帰ってきてくれる天津甘栗が楽しみでした。手が黒くなるまで皮を割って食べた甘栗の味、間違いなくそれは「おふくろの味」のひとつでした。孫ができると母は孫のために天津甘栗を買いに出かけました、同じ元町一番街の「サンワフルーツ」さんへ。「サンワフルーツ」さんはその名のとおり果物屋さんですが、ずっとずっと以前から天津甘栗で有名なお店です。今も店先に栗を煎る器械が置いてあって香ばしい匂いがしています。果物はトロピカルフルーツが「売り」で、フルーツの王様「マンゴー」、森のバター「アボガド」、悪魔のフルーツ「ドリアン」、緑色の宝石「キイウイ」、などなど店いっぱいに並べられたトロピカルフルーツはカラフルで気分は「熱帯」です。店先に置かれたジューサーで作るフルーツジュースは正真正銘の生ジュース、生ならではのフレッシュな味が口いっぱいに広がります。今年の夏は「サンワフルーツ」のフレッシュジュースで元気に乗り切ろう!


 東京の大学を選んだのは母親の愛情が過度の干渉に感じられて疎ましく、兎に角家を出たかったからです。しかし下宿生活を始めて、いかに母親の愛情に包まれて育てられてきたかに気がつきました。独りで暮らすようになって半月ほど経った頃、下宿に神戸から荷物が届きました。昭和45年頃は現在のような宅配はなく発送されてから数日経っていました。荷物を開けると母からでした。即席ラーメンとか、お菓子とか、お茶とか。ところがバナナはすでに腐りかけて痛んでいました。盲目の愛。好物のバナナを食べさせようと入れてくれたのでしょうが。あれほど疎ましかった母親の愛情の有り難さをしみじみ噛み締めました。
 なかでも一番嬉しかったのがのマロングラッセ、といっても始末やの母のことですからきちっと栗の形をしたマロングラッセではなく、製造途中でくずれてしまったかけらを袋詰にしたお買い得のマロングラッセ。勿論味は変わりません。わびしい下宿住まいの数少ない贅沢であった手挽きの豆で入れたコーヒーを呑みながら食べるのが最高の楽しみでした。そのの社長(現会長)の下村俊子さんが「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の最初の発表会のコンサートに来て下さるなんて当時夢にも思っていませんでした。まして震災後、神戸元町商店街で始めた「神戸・元町ミュージックウィーク」を下村さんが実行委員長、私が事務局長として一緒に続けることになろうとは。
 最近、新興のお菓子メーカーがたくさんあって話題に上ることが多いのですが、の代名詞とも言うべきゴーフルをはじめ、レスポワールやコウベピアーなど長く愛されてきたの銘菓の美味しさにあらためて感じ入ります。それは「古くて新しい」神戸元町商店街の良さそのものに感じられるのです。そしてそれは下村俊子さん、その方のお人柄そのものでもあるのです。


カフェテラス ウインドワード
 世代が違う、性格が違う、仕事が違う、趣味も違う。なのに、なぜか、生き方が似ている、と思う。生き方、と言うと抽象的過ぎるなら、ものの見方、感じ方、考え方が似ている。なぜだろう、それぞれまったく違った人生を歩んで来たのに。それは海、浜田紀雄さんには。それは音楽、私には。普段の生活、まさに生きていくための活動とは別の世界がふたりにはある。生きていることの感動の世界。生きていくための活動が仕事なら、生きていることの感動は趣味。仕事と趣味は本来なかなか両立しないものです。仕方なく仕事は仕事、趣味は趣味、と分けて考えるのが処世術かもしれない。しかし、仕事を身過ぎ世過ぎと割り切って、生きがいは趣味に、という生き方はどこかに嘘がある。そういう意味で浜田紀雄さんも私も果報者かもしれない。仕事を愛し、趣味を愛し、仕事と趣味が無理なく溶け合った。その生き方が、お互い似ている。
 前置きが長くなりましたが浜田紀雄さんは「カフェテラス ウインドワード」の店主です。「カフェテラス ウインドワード」はその名のとおりコーヒーショップですが、その名のとおり店主はヨットマンです。(注・ウインドワードとは風上に向かっていくという意味だそうです)。浜田紀雄さんの愛艇「J/24 UPWIND号」が乗り出す、海の風が、香が、店内いっぱいに広がっています。ヨットマン仲間がいつもお店に集いヨット談義に花が咲きます。おすすめは昼のランチ、特撰です。


老祥紀
 神戸は豚饅発祥の地で、豚饅で有名なお店が何軒かあるのですが、弊店のおすすめは元町通5丁目の老祥紀。豚饅にはなんとなくふっくらとしたイメージがありますが、老祥紀の豚饅は骨がある。といって骨入りではなく、しっかり芯があります。店頭で食べて良し、持ち帰って食べて良し、神戸元町みやげには最適です。


つるてん西店
 日本は蕎麦だ。えっ、あなたのソバがいい。元町の蕎麦は「つるてん」だ。だって名前からして蕎麦屋さんらしいでしょう。「つるてん」の蕎麦はサッパリ系でつるっ、としています。おすすめは「ぶっかけ」。えっ、何をぶっかけられるの。ご心配なく。どんぶり鉢いっぱい、蕎麦の上にかつおぶしやねぎや大根おろしや生卵や、がぶっかけられているのです。美味しさの秘密は、繁盛。昼時分はいつもお客様でいっぱいです。


喜八
 私は食通ではありません。自信を持って申しあげます。しかし人並みに美味しいものをいただくと幸せになります。ですから私のお勧めのお店は通好みではなく、ごく普通にいただくお料理です。決して食通ではない私が味の良し悪しを申しあげても信用していただけないかもしれませんが美味しくないものをお勧めするほど味音痴ではありませんのでその程度にはお読みください。
 「喜八」さんは栄町通にある食堂です。仕出屋さんとお呼びした方がよいかもしれません。南京町広場から南に下りて栄町通を越えて数軒目のお店です。時代劇に出てきそうな古風な店構えでとても懐かしい感じがします。以前は時折昼食を頂きに上がったのですが家内と二人になってそこまで足を運びにくくなりました。最近、出前をしてくださることが分かって時々お昼の弁当を届けていただいています。お昼のお弁当は一人前七八五円なのですが味も品数も信じられないような内容です。初めてその弁当を開けた息子が「エライ贅沢やん」と思わず声をあげました。食材、調理、味付け、盛り合わせ、そのすべてに唸ります。「喜八」のお弁当を頂いていると唐突ですが「文化」という言葉が浮かんできます。ごく普通の食堂の、ごく普通の弁当がこれほど豊であることは「食文化」の極みといって良いでしょう。ごく普通の暮らしの中にある豊かさこそ「文化」だと信じます。
 得てして通ぶった人たちが有難がるのものを「文化」と勘違いされる御仁がおられます。しかし本当の「文化」は私達の身の回りに、手の届くところにさりげなくあるのです。