承継
 来る令和二年、「丸太や」は創業百二十周年を迎えます。長きにわたって呉服商を営み続け、結社七十周年にもあたります記念の年を迎えることができますことは、何よりお客様のご愛顧の賜物とあらためて厚く御礼を申し上げます。
 明治三十三年、祖父三木正治郎が神戸有馬道で「丸太屋」を創業し、昭和二十五年、父正太郎が神戸元町で「株式会社丸太や」を設立し、母キクエ、私久雄が社長を承継して参りましたが、令和二年、息子弦が社長に就任する運びとなりました。何卒従前にも増しましてご厚情を賜りますことを心よりお願い申し上げます。


コトバ
 本来コトバは五感から生まれています。おそらく「春」も木の芽が「張る」からなのでしょう。冬の厳しい寒さの間にも木々は芽を膨らませ、いよいよ張る頃になって春は訪れるのです。「訪れも」も「音ずれ」なのでしょう。春の足音が聞こえてくるから。もう春です。ようやく春になったのです。


まさか
 阪神淡路大震災が勃発した直後、「まさか」神戸で地震が、と俄かに信じられませんでした。中国で新型ウィルスが発症したとニュースで知って、「まさか」世界中でコロナウィルスが猛威を振るうなどとは想像だにしていませんでした。しかし「まさか」は、「まさか」起きない、ではなく「まさに」起きることを思い知らされました。起きてしまった「まさか」に対応する手立ては「ピンチをチャンスに」するしかありません。


承継
 去る四月一日、息子 三木弦が「株式会社 丸太や」の代表取締役社長に就任いたしました。さしたる商才の無い私が三十数年来「丸太や」の経営に携わり店をツブスことなく「創業百二十年」の記念の年に無事息子にバトンタッチできますことは何よりお客様のご愛顧、取引先各位のご支援の賜物とあらためて深く御礼申し上げます。私もたいがい馬鹿正直ですが息子は私に輪をかけて愚直です。お客様より寄せられた信頼を裏切ることは決してないと確信いたしております。  誰の人生も波瀾万丈、いつどんな災難が降りかかるか誰も予測が付きません。「一寸先は闇」なのです。しかし「一寸先は光」かもしれない。「艱難汝を珠にする」新たに社長に就任した息子への贈る言葉です。