節  目
 今年も、早や年の瀬。一月に母が逝去し、四月、息子が入社、七月、娘が出産、人生の節目の年でした。来年早々、還暦を迎えますが、気が付いたら、そんな年になっていました。時代は、まさに転換期。どう生きていくのか、これまでの六十年の成果が懸かっています。


共  感
 北野坂のギャラリーに、絵の個展を拝見にうかがいました。会場に展示されている作品を鑑賞させていただきながら、同じ風景を見ている、同じ音楽を聴いている、と感じました。言葉ならぬ言葉で、共に感じあえることの歓び。共感の他の何が人生に必要なのだろう


鳴かず飛ばず
 我が呉服屋人生を省みて、「鳴かず飛ばず」という言葉が思い浮かびました。我ながら、これほど適切に該当する言葉はない、と自得しましたが、いささか情無い気がしないでもありません。しかし、翻って、居直るわけではありませんが、「鳴かず飛ばず」ということは、それほど悪いことではない、と思い直しました。鳴くこと、飛ぶこと、は華麗だ、優雅だ。しかし、鳴き続けること、飛び続けることは、不可能だ。一端、鳴き始めても、飛び立っても、いつか必ず、鳴き止まないわけにはいかない、降り立たないわけにはいかない。私は、呉服屋として、華々しく、鳴くことも、飛ぶことも、一度も、出来なかった。しかし、鳴く代わりに、語り続けてきました。飛ぶ代わりに、歩み続けてきました。訥々と、地道に。これまでが、そうであったように、これからも、呉服屋として、語り続け、歩み続けます。


人  間
 日本人が、「人間」という存在を、「人間」と呼称するようになったのは、いつ頃のことなのか、言葉の由来はさておいて、「人間」を、「人間」と呼んだことに、深い知恵を感じます。「ひとりの人は人ならず」、「人という字をよく見れば、人と人とのもたれあい」、という諺があるように、「人間」は、唯一人では存在できません。そもそも、「人間」は、父母がいて初めて誕生する。「人間」誕生の秘蹟の中に、他者 の存在なくして、「人間」は存在し得ないことが証明されています。「人間」は誕生して、父母の愛に育まれ、長ずるに及んで、兄弟、友人、配偶者、という様々な他者と出会い、成長していきます。「人間」が、独立した人格を獲得するためには、自分以外の、他者との良好な関係を築かねばなりません。「人間」は、「人と人との間」、人間関係の中でこそ、自己を確立することが出来るからです。