銀   婚   式
 結婚の申し込みに初めて家内の実家を訪ねたとき、義父から「早稲田大学を出られたそうで」と聞かれ「ソウダイ(早大)」と答えて面白い人物だという評価を頂きました。あれから二十五年、この三月二十八日銀婚式を迎えます。
 さる一月七日、娘と彼が結婚の申し込みに店を訪ねてきました。「萌さんをこれからずっと守ります」。眼の奥の光に娘を託しました。真面目な人物だと評価したからです。


先   入   観
 先入観、というと余り良い意味合いでは使われませんが、見方を変えると、予測を立てる、ということで決して悪いことではない。むしろ必要、というか重要なことです。しかし他人の意見や感想を鵜呑みにすると色眼鏡で見てしまって判断を誤りかねません。自分の眼で見、耳で聞き、心で感じることに素直でありたいです。


蘇 鉄
 庭に一本、蘇鉄の木が植わっています。 蘇鉄は一気に葉を広げる植物ですが、ここ数年、新しい葉が出ませんでした。昨年の夏、植木屋さんが葉刈りをして、一層葉ぶりがさみしくなっていました。春頃、茎の真ん中に新しい芽が盛り上がってきました。いつ芽吹くのか、楽しみにしていたのですが、一向に気配がありません。七月中頃、梅雨の雨が時に激しく降り続いていた頃、突然、芽が弾けて若葉が伸び始めたのです。グングン、見る見るうちに大きくなって、梅雨が明けたその日、目一杯に青葉を広げました。真夏の太陽を燦燦と浴びて、まるで緑の王冠のように。まさに命の輝きです時に非ず、と何年もの間、じっと力を蓄え続け、時を得、時を選んで、この時とばかり全開する。自然の神秘に心打たれました。