コ ー ヒ ー
 獅子文六に「コーヒーと恋愛」という小説があります。作中マンデリンという名の豆が出てきて妙に心に残りました。インスタントか喫茶店で飲むコーヒーしか知らなかった私が、手作りのコーヒーの味わいを憶えた頃のことです。
 教えてくれたのは友人です。ある日遊びにゆくと、ミルで豆を挽き、ドリップで漉したコーヒーを飲ませてくれました。
 豆を挽きお湯を注ぐ、その瞬間、部屋いっぱいにたちこめる香気、白いコップに琥珀色。口に含んでうまく入れられたなと満足できたときのささやかな充実感。
 彼が私に教えてくれたのは人生の味わい方ではなかったか、そしてそのことに深く感謝しています。


レ コ ー ド
 極くプライヴェイトな話ですがレコードが好きです。銀色に光るコンパクトディスクではなく漆黒の円盤。音が良い、ジャケットが綺麗、鳴らす楽しさがある。
 ところが簡単便利のコンパクトディスクに駆逐され、いつのまにかレコード屋さんからレコードが消えてしまいました。売れないものは置かない、というのは商売かもしれませんが文化は多数決ではありません。まして趣味嗜好においておや。
 いいものはいつまでも残したいと考えています。


強 者 と 弱 者
 NHKはときに素晴らしい番組をつくってくれます。「生命40億年はるかな旅」。シリーズの放映を固唾を飲みながら見ています。感動させられるのは私達人類の祖先である生物がいつの時代にあっても弱者であったことです。弱者であるがゆえに絶えず生命の危険にさらされ、生きのびるために海から河へ、そして陸へと新天地を求めつづけ、未知の環境に適応する知恵を身につけてきたことです。他方、強者は強者であるがゆえに滅んでゆきました。小さくて弱くて、いつ押しつぶされるかもしれないという不安、もしかしてそのなかに明日への希望があるのではないか。生きのびる知恵を見つけることができるなら、と励まされます。


ウォルトディズニー
 1937年、ウォルトディズニーは最初の長編アニメーション映画を製作しました。「白雪姫」です。その楽しさ、美しさは58年たった今なお色褪せることなく人々を魅了し続けています。「ピーターパン」「ダンボ」「ピノキオ」「バンビ」などなど、誰もが一度は見たことのある作品をとおしてディズニーは、生きることのなかで大切にしなければならないもの、夢、希望、愛、勤勉、正直、子供の純真さ、想像力、自然、自分の可能性、を説き続けてきました。時を越え、所を隔てず、人々に感動を与える数多の傑作は人類の遺産として全世界で愛されつづけることでしょう。