気が付けば今年も残り一カ月と少し。街路樹も秋の色に染まり、冬の気配すら近づいてくるのを感じます。一年が経つのは、あっという間ですね。 この季節になると、関健二郎さんの大島紬に袖を通したくなります。やわらかい質感といい、こっくりと落ち着きのある色といい、心落ち着けて街や自然の空気を味わいたいこの季節には、なんだかとても合っているように思うのです。 この度、弊店では二年ぶりに関健二郎さんの創作大島紬の作品展を開催します。弊店でもお付き合いの長い方であり、これまでにもたくさんの方に関さんの着物をご愛用いただき、ご好評をいただきました。二着目、三着目をお求めくださる方がたくさんいらっしゃるのも、この創作大島紬がどれほど人を惹きつけ魅了するかという証でしょう。何度でも袖を通したい。ずっと身にまとっていたい。そう思わせてくれる、稀有な着物です。 創作大島紬の着心地については、麻衣子の文に譲りたいと思います。彼女が初めて自分で選んだ着物は、関さんの創作大島紬でした。二年前に初めてこの着物に袖を通した者として、率直にその思いを言葉にしています。きっと、創作大島紬の魅力をお感じいただけるものと思います。 どこまでもやわらかく、なめらかな創作大島紬の風合いは、どのようにして生まれるのでしょうか。 関さんはその秘密を、大島紬特有の【泥染】にあるといいます。【泥染】こそが、大島紬の大島紬たる本質なのだそうなのです。 鹿児島に工房を構える関健二郎さんも、泥染だけは奄美大島で行っています。奄美大島の、鉄分を多く含んだ珊瑚質の細かな土が、泥染に最も適しているのです。泥染のためにはまず【テーチ木】といわれる奄美に自生する植物を煮出した染料で糸を染めるところから始まります。何度も煮汁に浸けて染めますが、まだこのときは赤茶色です。これを【泥田】に浸して染めるのが【泥染】です。 奄美で染められた糸は、鹿児島で手機によって織りあげられます。 手で織るということは、糸の感触を感じながら、織りあがる布の質感を想像しながら織るということ。一本一本しっかりと糸を打ち込まれた関さんの布は、一般的な大島紬よりも密度が高く、そのため、しなやかでありながらコシがあり、シワになりにくく、しっとりと身体に添う独特の生地風になるのです。 最高の糸、最高の染、そして、最高の織。この三つが揃ってこそ、この至極ともいえる質感の布が生まれます。とろけるような手触りは、他のどの着物にも無いものです。でもこれ以上言葉を並べるのは控えます。 本当に良いものは、何も言わずとも自然とその魅力が肌で伝わるもの。 きっと、その手で触れてみていただければ、ただそれだけで、この布の魅力を感じていただけると思います。 十一月二十一日から二十三日までの三日間は、関健二郎さんが鹿児島からお越しくださり、創作大島紬の魅力をお話しくださいます。 今回も新作や力作を多数そろえています。ぜひご覧になって、お手に取ってください。 ご来店を心よりお待ちいたしております。 神戸・元町 丸太や 三木 弦 |