神戸より半月ほど遅れて北陸にも春が来ました。桜の花の儚さは、春という季節の儚さに重なります。神戸では最高気温二〇度を超える日も多くなりました。ずっと先のように思っていた夏が、気がつけば身近に迫っているようです。 雪国小千谷では、半年近く雪に覆われる冬に夏の着物がつくられます。夏の着物として今最も注目されている『小千谷縮』です。小千谷の特産品である小千谷縮は、細く績まれた苧麻糸に強い撚りをかけて織られた麻織物です。深い雪がもたらす安定した湿度に守られて織られた小千谷縮は、雪解けと共に街へ流れ、上質な夏の着物として人々の手に渡ります。 小千谷縮の特徴は、独特の縮加工により生まれる『シボ』という凹凸です。このシボにより、硬い麻糸はしなやかさと弾力を持ち、さらに肌と衣の間に風の通り道ができることで、麻の持つ吸放湿性、熱伝導性とあいまって清涼感が生まれます。小千谷縮は高温多湿な日本の夏を少しでも心地よく過ごすために進化した着物なのです。 小千谷は紬の産地でもあります。『小千谷紬』です。冬の小千谷の安定した湿度は絹織物にも良く、上質の紬が織られてきました。中でも縮緬のように強い撚りを掛けた糸を織り込んでサラっとした生地風を生み出した『紬ちりめん』や、小千谷縮の工法を紬に応用した『湯揉み絹縮』がオススメです。紬ちりめんは袷や単の着物として、湯揉み絹縮はサラっとした透け感のある生地風を活かして単から夏の着物や、単羽織に向いています。 小千谷から着物を届けてくださったのは樋口隆司さん。着る方を美しくするシンプルな織物を目指し、小千谷縮や小千谷紬を制作されています。着物は着て楽しむものという思いから、着心地を一番に考えられたものづくり。夏はやっぱり小千谷縮の抜群の心地よさ。厚ぼったい紬のイメージを払拭する軽やかな紬ちりめんや湯揉み絹縮。着物を着て楽しむ方にこそ是非一度袖を通していただきたいと思います。 樋口隆司さんは四月二六日から二七日まで小千谷からはるばる神戸の弊店までお越しくださり、皆様とお話しくださいます。お客様とお会いできることを大変楽しみにしておられます。当日は越後の銘菓を樋口さん自らご用意しお持ちくださるそうです。皆様ぜひお越しください。心よりお待ちいたしております。 神戸・元町 丸太や |
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