昨年の夏、信州松本にある横山俊一郎さんの工房を訪ねました。長野の山々は深い緑に覆われていました。山の色は単純ではありません。多様な生態系が重なり合い、交じり合い、一言で言い表せない深い色を織り成しています。しかも山の色は複雑な色を含みながら、全体で一つの色として見えるのです。
 横山俊一郎さんが織られる『みさやま紬』も、そんな山の色のようだと思いました。栗、胡桃、漆、玉葱、梅、桜・・・天然の素材から得られた色は、同じように染められても同じ色にはなりません。一枷の糸の中にも、まるでその素材が生きてきた時間を全て包むように、様々な表情の色が含まれています。織りあがった反物は、自然のムラが重なり合い、奥行きのある着物となります。自然がずっと昔から私達を育んでくれたように、みさやま紬も私達の身体を優しく抱いてくれる着物です。
 自然の色が楽しめるのは無地や縞格子柄のシンプルなもの。淡い色合の着物は陽の光に包まれているよう。濃く深い色は自然の豊かさ、奥ゆかしさを感じさせ、力強い色の縞は大地の生命力を感じさせます。近年の新しい取り組みとしては、九寸名古屋帯の制作が上げられます。花織りの段が柄に織られた名古屋帯は、着物のコーディネートを一層豊かにしてくれるでしょう。

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<花織りの九寸帯と>

今回出品のみさやま紬です。
袋帯は、いずれも西陣織、山口和市郎さんの作。ご来店を心よりお待ちいたしております。