昨年三月、日本刺繍作家の森康次さんに個展を開催していただいた折、森康次さんが、「私の友人で、金沢で友禅染をされている四ツ井健君という、日本工芸会の正会員が、とても良い仕事をされておられるので、是非、お店で作品展をされてはと思うのですが」とおっしゃってくださいました。今どきですので、早速、インターネットで調べると、四ツ井健さんのホームページが見つかり、ご本人のプロフィールや作品が紹介されていました。とても端正な作風でお人柄がしのばれました。 六月の中頃、四ツ井健さんからお電話を頂戴し、弊店を訪ねたいとのお申し出で、喜んでお迎えいたしました。訪問着や染帯を持参されて拝見させていただきましたが、やはり、眼の前で見せていただくと、折り目正しいものづくりの姿勢がひしひしと伝わってまいりました。「私は、金沢で友禅染をやっていますが、通常多くの方がイメージする加賀友禅ではありません。」という言葉通り、型にはまらない、伸びやかさが印象的でした。「ずっと日本伝統工芸展に出品して来て良かったと思うのは、ただ技術にたけた作品では評価されなくて、独創性が求められることが励みになりました」とおっしゃった言葉が心に留まりました。 来店の折、年が明けた三月に個展を開催させていただくようお願いをし、是非、金沢の工房をお訪ねしたいと申し上げ、去る二月二十九日、閏年の第五水曜日というまたと無い日に金沢に参りました。その数日前まで厳しい寒さが続き、金沢は雪かと思ったのですが穏やかな日和でした。工房にご案内いただくと、空気がピリッと引き締まっていました。いつもながら工房を拝見すると染織作家の人となりを窺い知ることができます。四ツ井健さんの一切の妥協を肯首しえない真摯さが工房のここかしこから滲み出ていました。 今、何が最も大切なのでしょう。私は嘘のない生き方だと思うのです。口から出まかせが多すぎるのです。誠実であること、律儀であることが、もう一度、大切にされなければなりません。四ツ井健さん、その人、その作品こそ、今、私たちが最も大切にしなければならないものだと思うのです。 四ツ井 健さんは、会期中の十七日(土)四時すぎに弊店にご到着、二十日(火)まで、会場にて、ものづくりへの熱い思いなど、お話をお聞かせくださいます。どうぞ、万障お繰り合わせのうえ、ご来店いただきますよう、心よりお待ちいたしております。 |
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