私は常々、呉服業界の沈滞の原因は、企画、制作、販売の第一線に女性が立っていないことにあると考えています。例えば「丸太や」は家内が仕入、販売の先頭に立っているから元気なのです。私ではからっきし駄目なのです。
 5月のゴールデンウィークに店番をしていると、うら若き女性が店先の商品に目を留めておられました。近寄って「いらっしゃいませ」と声をお掛けすると、「私は京都の呉服問屋のものですが」と「やまと株式会社 営業部チームリーダー 村田理絵」と記された名刺を差し出され、「お話を聞かせて頂きたいのですが」とおっしゃるのです。「どうぞ」と店の奥にご案内しました。
 「どうして話を聞こうと思われたのですか」とお尋ねすると、「今日、私は休日で、神戸に遊びに来たのですが、仕事柄、呉服屋さんの店先が気になって、見るともなしに見ると、ほとんどのお店が、安いです、とか、安くします、みたいな売り方で、お店だけが、シッカリとした商品をキッチリした価格で販売されていて、どういうお考えで商売をされておられるのか興味を持ったのです」と応えられました。「私が、なぜ貴女と話をしようとしたかお分かりですか。それは貴女が女性だからです。私は呉服業界が沈滞している大きな原因は、この業界で女性が活躍されておられないことにあると考えています。だから貴女とお話をしようと思ったのです」。
 「なぜ呉服問屋にお勤めになられたのですか」。「大学を出た後、イギリスに留学したのですが、日本に帰ってどんな仕事をしようかと考えた時、学生時代、京都の旅館でアルバイトをしていた頃、着物を着なくてはいけなかったのですが、着物を着ることが大好きで、そうだ、私は着物が好きなんだ、だったら着物の仕事をしようと決めたのです」。私は村田理絵さんが聡明で感性の優れておられることに力づけられて色々長話をさせていただきました。
 村田理絵さんが帰られた後、彼女の勤め先である「やまと株式会社」はどんな呉服問屋なのだろうとホームページを見ました。呉服問屋の正統を歩んでおられる堅実な会社とお見受けしましたが、取扱商品として紹介されていた「きはる」という木綿の着物に深く関心を抱きました。半月ほど経ってご村田理絵さんからお電話を頂戴しました。あらためて弊店にお越になられるとのことでした。私は「きはる」という木綿の着物に興味を持ったことをお伝えすると、その商品説明のためにお越しくださるそうでした。
 「きはる」は「やまと株式会社」の新商品として開発され、その専属スタッフに村田理絵さんが採用されたそうです。社長からチームリーダーとして一任され、「きはる」の企画、制作、販売の先頭に立ってがんばっておられるのです。私は「きはる」を拝見し、色柄、品質、価格、三拍子揃った三重丸の花丸を付けて超オススメの木綿の着物だと直感しました。百聞は一見に如かず。是非、「丸太や」で実物を手にとってご覧ください。きっと「きはる」の愛用者になられること間違いありません。