第七章  再出発

 東京新宿NSビルで3月26日から31日まで開催された「神戸復興バザール」には、早稲田大学時代のクラスの学友、オーケストラの楽友、が次から次に来てくれて、まるで同窓会でした。来場された一般のお客様も「がんばってくださいね」と声を掛けてくださって次々にお買物をしてくださいました。思いもかけなかったほど販売することが出来て、正直、ほっと一息つけました。震災後、商売らしい商売が出来ていなかったのです。何よりうれしかったのは、「丸太やオリジナルコレクションコンサート」が音楽のお好きな方に喜んでお買い求めいただける、という確信が持てたことです。
 夢のような東京での6日間が終わり、翌朝、ホテルを出て喫茶店でモーニングサービスのトーストを食べていました。会場に来て下さった友人、お買物をして下さったお客様、会場で販売の手伝いをして下さった知人、東京での販売を応援してくださった皆さんのお顔が思い浮かんだ、その時、感謝の気持ちで胸が一杯になって、涙が溢れてきました。帰路、新幹線で新大阪まで、そこから在来線に乗り換えて神戸に向かいました。電車が武庫川を渡って西宮に入った途端、周囲の景色が一変しました。地震で壊滅した街の惨状が眼に飛び込んできたのです。わずか6日間、東京に居ただけで、被災地の状況を忘れかけていたのです。涙が頬を伝いました。地獄から天国に行き、天国から地獄に戻ったのだ。自分が置かれている状況を嫌というほど思い知らされました。
 しかし、「神戸復興バザール」は「丸太やオリジナルコレクションコンサート」が神戸以外の地域でも販売できる、という自信を私に与えてくれました。震災の惨禍のなかで「丸太や」が生き残る道は、それしかない。発表当初、夢としか思っていなかった全国展開を本当にやるしかない。先ず、京都で発表しよう。京都は呉服屋にとって最もご縁の深い所です。「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の生みの親である横山喜八郎さんも、名和野要さんも協力してくださって、横山喜八郎さんのお姉さまがオーナーである京都岡崎の「ギャラリー大」で5月21日から28日まで「丸太やオリジナルコレクション コンサートIn 京都・岡崎」を開催いたしました。会場では大阪シンフォニカー時代の音楽仲間と一緒にフルート四重奏でミニコンサートも開きました。「丸太やオリジナルコレクションコンサート」を、なぜ私達が制作し、販売するのか、その理由を理解して頂くには、私達が演奏する音楽を聴いていただくことが一番だ、と考えたからです。
 京都を皮切りに、それから、敦賀、長岡京、名古屋、大阪、岡山、茅ヶ崎、松本、清里、高山、大垣、高松、と全国各地で「丸太やオリジナルコレクション コンサート In ---- 」と銘うって発表会を開催して参りました。各会場では、現地の音楽仲間に共演して頂いてミニコンサートも同時に開催いたしました。夢だった「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の全国展開を実現することが出来たのです。
名古屋市・大黒屋画廊 茅ヶ崎市・長谷川書店ギャラリー