第四章  誕生

 この世に初めて生まれ出たバイオリンの帯。1本はからし色の地に赤茶のバイオリン、もう1本は深緑の地に金茶のバイオリン。ふたりで感動して帯を見詰めている丁度その時、来店されたお客様が「素敵ですね」とやはり感動されて「深緑の帯は少し地味だから私に買わせてもらえないですか」と申し出られたのです。確かに、からし色の帯が少し派手目なので家内の年恰好には合っていて、深緑の帯はお客様にお求め頂くことになりました。そのお客様はコーラスをなさっておられて、音楽が大変お好きです。そうか、着物がお好きで、音楽も大好きな方なら、家内と同じように音楽をモチーフにした着物や帯を喜んでお求めになられるのだ。着物が好きで、音楽もお好きなお客様に音楽をモチーフにしたオリジナル商品を提案しよう。早速、横山喜八郎さんにお礼のお電話を差し上げ、バイオリンやピアノ、ハープやマンドリンの帯を制作していただけないか、ご相談いたしました。「難しそうですが、やりましょう」と快諾していただきました。
 あらためて京都北山の工房をお訪ねし、音楽をモチーフにしたオリジナル商品の制作を思い立った経緯をお話いたしました。「通常、問屋さんからの依頼では、同じデザインの商品を複数製作するのですが、今回のお申し出については、1本ずつデザインを新たに制作させてください。同じデザインのものを作るのは、コピーになりますから、やはり気持ちの入り方が違ってしまって。テンションの低いものをお客様にお求め頂くのは、その方に失礼ですから」とおっしゃいました。私達も、お客様が深い思い入れを持ってオリジナル商品をお求め頂く以上、同じ気持ちです、と横山喜八郎さんの見識に賛同いたしました。
 翌、平成6年2月に音楽をモチーフにしたオリジナル商品の発表会を開催すことを決め、準備に取り掛かりました。なぜか、いつのまにか、私のなかで、まだ見ぬオリジナル商品に「丸太やオリジナルコレクションコンサート」という名前が刻み込まれていました。コンサートにお出掛けになる時、音楽をモチーフにした着物や帯をお召しになられたら、どんなにお洒落だろう。コンサート会場で、音楽を聴く楽しみと、着物でお洒落する楽しみを、ふたつながら味わっていただければ。弊店の取り組みに、名和野要さんが「着物は私が創りましょう」と申し出てくださいました。
「丸太やオリジナルコレクションコンサート」
処女作品ろうけつ染帯 横山喜八郎作
「丸太やオリジナルコレクションコンサート」
型友禅染着尺 「バイオリン小紋」