本を読むのは、それなりに根気がいります。弱冠の知識と経験も。そして何より、時間が。しかし、場所はいらない。お金も、そんなにいらない。で、本を読んで得られるものは限りなく大きい。人類の、世界の、歴史の遺産を我がものにすることができる。想像力さえあれば。想像力、という魔法の力で、ほんのひととき、時空を越えて旅に出ませんか。

 子供のために書かれた物語を大人が読むのは無意味と言うわけではありません。ファンタジーを生みだす創造力はイマジネーションをかきたてる想像力だからです。子供にとってファンタジーが大切なように、それ以上に、創造力と想像力を失いかけた大人にこそファンタジーは大切です。


『 セロ弾きのゴーシュ 』  宮沢賢治/角川文庫/角川書店
 セロ弾きのヒサオは学生オーケストラで「鉢植えの盆栽(凡才)は1日25時間練習しないと駄目」と叱られて半べそをかいていました。「僕はゴーシュだ」と思いましたがゴーシュのように最後は上手くなるとは思えませんでした。でも、あのとき『セロ弾きのゴーシュ』を読んで良かった。


『 ライオンと魔女 』  C.S.ルイス/瀬田貞二訳/岩波書店
 お手伝いをした子供ミュージカルの原作。原作を読むきっかけを与えてもらえて幸せです。胸がワクワク、心臓がドキドキする波乱万丈の冒険物語ですが、そこには深い意味が秘められています。秘密をとく鍵は『聖書』の中にあるそうです。


『 ふしぎの国のアリス 』  ルイス・キャロル/生野幸吉訳/福音館書店
 「金色のひるさがり」という冒頭の一節が大好きです。その言葉に引き込まれるようにアリスの世界に入っていく。そこは別世界、ファンタジーだけが描きうる別世界。世界中にアリス愛好家がおられるのもむべなるかな。