第五章  発表会

 着物の世界に、かつて無かった、洋楽器をモチーフにしたオリジナル商品を、どう発表するのか。従来どおりの、決まりきった呉服展示会では駄目だ。なぜ私達が、あえて着物や帯の絵柄にバイオリンを描いたのか。その深い、限りない思いを、どうすればお客様にお伝えすることができるのだろう。私達が、探して探して、見つからなかったバイオリンの着物を、帯を、横山喜八郎さん、名和野要さんに創っていただいたのは、なぜか。それは、愛。音楽への、着物への、深く、限りない、愛。
 私達ふたりが、着物が好きだから、音楽が好きだから、生まれた「丸太やオリジナルコレクションコンサート」。だったら、「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の発表は、お客様に着物と音楽を楽しんでいただこう。「きもので集うコンサート」。お客様に着物をお召しいただいて、私達が演奏して、コンサートを開こう。「きもので集うコンサート」こそ、私達が洋楽器をモチーフにした着物や帯を制作し発表することの真の意味をお伝えできるのではないか。
 平成6年2月13日、弊店1階、2階の特設会場で「丸太やオリジナルコレクションコンサート」を発表しました。横山喜八郎さんが創作してくださったバイオリン、ピアノ、ハープ、マンドリン、トランペット、ティンパニー、ホルン、など洋楽器をデザインした17点のろうけつ染の帯、名和野要さんが制作してくださったバイオリンの小紋、バイオリンとチェロの更紗模様の着物、8点が発表されました。そして同日、午後0時と3時の2回、弊店正面向かいの「ユーハイム本店」3階ホールにて「きもので集うワインコンサート」を開催いたしました。「ユーハイム本店」店長ご自慢の料理とワインを味わっていただき、その前後に私がチェロ、家内がビオラを弾いて、モーツァルトの喜遊曲第1番KV136と弦楽四重奏曲第15番KV421を演奏いたしました。会場には横山喜八郎さん、名和野要さんもお越しくださって、親しくお客様とご一緒に、料理と会話を楽しんでくださいました。
 「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の第1回発表会は多数のご来場を頂き、盛況裡に終了することが出来ましたが、会期中、来店して下さった音楽仲間が「とても素敵だけれど、普段、着物を着ないから、この雰囲気で、気軽に使えるスカーフとかがあったらうれしい」と言われたのが心に残りました。着物を創る感性や技術でブラウスやスカーフを作れたら。着物、という和の世界に、バイオリン、という洋の世界を採り入れたのだから、洋のファッションに、和のファッションを採り込もう。その年の12月に開催した、第2回目の「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の発表会には横山喜八郎さんの染帯や名和野要さんの型友禅染の着物に加えて、長田けい子さんにブラウスやスカーフ、ポミワンネさんにブローチやイヤリングを創っていただきました。勿論、音楽をモチーフにして。和に洋、洋に和、と音楽を通じて、世界が広がっていき、これからさらに、どこまで、どんなふうに広がっていくのだろう、と期待で胸が一杯になりました。
「きもので集うワインコンサート」
1994年2月13日 ユーハイム本店3階ホール
「第2回丸太やオリジナルコレクションコンサート発表会」