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夏のたより
   
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七月三日(日)より十八日(月)まで
弊店特設会場


 入梅後すでに久しいですが、なぜか余り雨が降りません。といってすっきり晴れるわけではなく、ジケジケしているのはやはり梅雨。七月に入ると夏の陽射しがまぶしく照りつけることでしょう。
 例年、七月には「なんもの掘出市」を開催してまいりましたが、本年は心機一転「夏得市」を開催いたします。ひらたく言うと「サマーバーゲン」です。「なっとくいち」とお読みいただいて「お安さ納得」という心。季節柄夏物のきものや帯のお値打ち品を取り揃えました。勿論、秋冬物、それに「夏得市」ならではの「なんもの超特価品」もご用意いたしております。中身は見てのお楽しみ、ご来場心よりお待ち申しあげます。

 
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七月二十一日(木)より三十一日(日)まで


 この道を車で走るのは三度目なのにまるで初めてのような印象、ワァー狭い、こんなに狭い道だったの。車一台が通り抜けるのがやっとの細い道。芳賀信幸さんの藍染工房「芳心庵」のある京都市左京区広河原はここも左京区なのかと驚くほど京都市内中心部から遠く離れた所にあります。 堀川通を北に上がって上賀茂神社、京都産業大学の側を通り過ぎ、貴船鞍馬がもうそこというあたりになると急に道幅が狭くなり鞍馬を通り過ぎるとまるで山道、細く曲がりくねった道を登って行きます。窓を明けると森閑とした杉木立から微かに杉の香、道に沿って流れる渓流のせせらぎ、鳥の鳴き声。 対向車に注意を怠らないようにしながら清々しい山間の空気をしっかり楽しみながら車を走らせました。つづら折の急な坂道を登りきるとそこは花背峠、一変に視界が広がります。ゆるやかな坂道を下ってゆくといかにものどかな花背村に入ります。人家の軒先に触れるように走りぬけ左に折れると京北町、美山町に向かう三叉路を右に曲がってさらに奥に分け入るとようよう広河原にたどりつきました。名神高速の京都南インターを出て一時間半のドライブ。
 広河原の工房を最初に訪れたのは震災の前の年、平成六年四月のことでした。その前年の秋、横山喜八郎先生のご紹介で京都市美術館で開催された「現代工芸美術展近畿展」を見学に行きました。出品された作品はどれも力作ばかりで圧倒されましたが見続けてゆくうちに次第に疲労を感じ始めたその時「シンクロニシティ」と題された藍染の作品が眼に留まりました。藍でシンプルにグラデーションに染められたその作品は静に訥々と語るでもなく語らないでもなく、しかし私の心にしみじみと伝わるものがありました。 いつかこの作者の個展を開催したいと願望しました。芳賀信幸というその作品の作者の名前を深く記憶に留めました。その後、縁あって芳賀信幸さんの個展を弊店で開催することになり翌年の四月に広河原の工房を訪れたのです。
 スキー場がすぐ側にあるという場所柄、四月というのに軒先に雪が残っていて市内中心部からはるか遠くに来たことをあらためて実感しました。ログハウスのような木造の工房は入り口が土間で藍甕が四つ地中に埋められています。その奥が居間になっていて書棚には染織関係の本がびっしり納められています。 奥様が香ばしい蕎麦茶に山菜の手作りの料理でおもてなしくださったことがとてもほのぼのと心に残りました。夜、光るものは星と月ときつねの目、というお話に現代工芸美術展で拝見した作品の秘密が解けたように思いました。
 二度目に訪れたのは平成七年八月、震災の七ヵ月後でした。震災の後、芳賀信幸さんから届いた大きな荷物には軍手や雑巾、レトルトカレー(激辛カレーで激震の洒落かと笑ってしまいましたが)など雑貨品や食料品がいっぱい入っていて震災後の状況を思いやってくださっていることがひしひしと伝わって芳賀さんの暖かいお人柄に感激しました。 丁度その頃、家内のクラスメートで九州交響楽団でバイオリンを弾いている友人から励ましの電話があり「バイオリン教室の発表会の記念品に使える千円ぐらいの商品がないですか」という注文を頂いて芳賀さんにバイオリンやピアノの柄のハンカチを藍染で作っていただくことになりました。そのハンカチはその後、丸太やオリジナルコレクションコンサートの大ヒット商品になったのですが震災後の苦境の中で今後どのようなものづくりをお願いするかのご相談におうかがいしたのです。 そのなかからハンカチをはじめTシャツ、コースター、テーブルセンター、暖簾、タペストリー、ゆかた、などたくさんのオリジナル商品が生まれました。
 あれから十年、気がつくと十年が経ちました。無我夢中の十年。その間、芳賀信幸さんとは何度もお会いしてものづくりのご相談や個展を開催していただきました。この七月に弊店で個展を開催していただくことをお願いして何故か広河原の工房をお尋ねしたくなりました。 広河原の空気を久しぶりで吸いたくなったのです。たどりつくと十年前と同じ、地図を見なくてもここだとすぐ分かりました。小川にかかる小さな橋を渡って坂を登ると木造の工房、芳賀さんは谷川の水を引き込んだ洗い場で染め上がった藍の布を水洗されていました。心を洗いたくて来たのかな、この十年の。

 
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夏季休業
清里マンドリン音楽祭
八月九日(火)より十一日(木)まで
 
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八月二十一日(日)より二十八日(日)まで


 どちらかというと旅行は、とくに団体旅行は苦手です。まわりに気配りするのが上手く出来なくて疲れてしまうのです。唯、ものづくりの現場を訪ねるために遠くに出かけることは大好きです。その場を訪ねてなるほどと納得するのは謎解きで謎が解ける快感があります。仕事という建前ではありますが仕事を楽しめるとうのは良いものです。
 昨年の2月下旬、着物姿の男女が来店され「有田の倉島泰山窯で修業した伊藤岱玲というものですが、この度独立して神戸で個展をひらくことになりましたのでご挨拶に参りました」とのこと。聞くと京都市立芸術大学で陶芸を勉強され、その後、有田の倉島岱山先生のもとで10年間修業されたそうです。丁度その間、弊店も倉島岱山先生にご縁を頂きその工房「倉島泰山窯」で「丸太やオリジナルコレクションコンサート」のシリーズを制作していただきましたが、伊藤岱玲さん自身、弊店のオリジナル商品の制作に携わっておられたそうです。同伴の女性は奥様で、奥様も京都市立芸術大学で日本画を学ばれたとのこと。呉服屋である弊店に挨拶に伺うのだから、と着物姿でお越しくださったのです。
 ご案内いただいた個展を拝見に北野坂のギャラリーを訪ねました。磁器ならではの透明感、絵付けの初々しさ、清楚な華やぎ、とても気持ちよく見せていただき湯呑みを5客頂戴しました。ほぼそのすぐ後のことですが倉島泰山窯から弊店が特注していた商品は制作点数が余りに少なく採算が合わないので今後は対応できないとの申し出がありました。後継として伊藤岱玲さんのことをお話すると「彼ならきっと良いものを作ってくれるでしょう」と推薦してくださいました。伊藤岱玲さんは「師匠の名を辱めない、師匠を超える作品をめざしてがんばります」と快諾いただきました。
 あれから1年が経ち、いよいよ伊藤岱玲さんが制作してくださる「丸太やオリジナルコレクションコンサート」が誕生します。そのお披露目を兼ねて8月21日(日)より28日(日)まで弊店で「技を継ぐ―伊藤岱玲作陶展」を開催していただくことになり、8月3日、工房のある兵庫県丹波市氷上町を尋ねました。氷上は兵庫県の南北の真ん中あたり、東西では東寄りにあります。震災前に二度、私的に遊びに行ったことがあって達身寺というお寺に安置された多数の素晴らしい仏像に感動したことがありました。氷上へは舞鶴自動車道を北上し春日インターから新設された高速道路に右折するのですが、丹波篠山を超えると山の相貌が急に雄大になり兵庫県の県域がいかに広いかが実感されます。しかし神戸からわずか1時間で伊藤岱玲さんの工房に着きました。
 古民家を購入された念願の自宅兼工房は民家ならではの落ち着いたたたずまいで、すぐ側を加古川の源流が流れています。既に絵付けの済んだバイオリンやピアノの柄の皿や鉢が並べられていて窯で焼かれると透明な白色に変わるのだと思うと期待に胸がふくらみます。伊藤岱玲さんは訥々とこれからどんなふうに弊店のオリジナル商品を作ってゆくのかを語ってくださいました。妥協しないで、他人が決して真似の出来ないものを作る。時間がかかるかもしれない。採算が合わないかもしれない。しかしそうしなければ自分が納得できるものは生まれない。工房は、だから工房はここに定まったのだ。伊藤岱玲さんの作品の生まれいずるところはここをおいて他にはなかった。謎がまた一つ解けました。
 
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八月二十一日(日)より二十八日(日)まで

 ◆作品募集◆
アイディアあふれる作品をお待ちいたしております。
作品は前日持込まで可能です。
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■タイムズメリケン トワイライトカフェコンサート
メリケンパーク イヴェントステージ
毎日夕方6:00〜8:00

7/24(日)と7/27日(水)は丸太やミュージックフレンズが出演します。詳しくはパンフレットをご覧下さい
■元町夜市 元町全丁
7月26日(火)6時〜
商店街あげての手作りの味とイヴェントをお楽しみ下さい
■みなとこうべ海上花火大会
8月6日(土)
ゆかたの着付けおよび着付けのレッスンのご予約承ります。
TEL078(331)1031