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 緑は円を連想させます。緑がつながってつながって円になる。つながった縁は円のようにまるく穏やかで暖かい。一昨年の九月に思いがけなくも頂いた「京絞り寺田」の寺田豊さんとのご縁からつぎつぎと良いご縁を頂戴いたしました。六月には寺田さんのご紹介で東京から取材にお越しくださった世界文化社「家庭画報特選きものサロン」編集部の矢飼満実子さんのお眼に弊店の着物や帯が留まり「きものサロン秋号」に着物が二点、帯が三点、それに帯揚げ、帯留めをご紹介いただくことになりました。初めてモデル着用で誌面に掲載されますので楽しみにしています。
 呉服屋を継ぐと言っている息子が京都の取引先を回るのに付いていきたいと言うので三月、いっしょに連れて行きました。寺田さんから案内を頂いていた京都の絞り組合の会場を訪ねると着物を着ている家内に受付でおみやげをいただきました。着物をお召しの来場者にプレゼント、とのこと。京都の文化財に指定されている旧日本銀行京都支店の古きよき時代を偲ばせる建物の会場では絞り染めの様々な技法が実演されていて寺田さんが初めて見学する息子に丁寧に説明してくださいました。帰宅して会場で頂いたおみやげを開けてみると綺麗な絞り染めのハンカチでした。
 震災前に始めた「丸太やオリジナルコレクションコンサート」は好評を博し、評価も上がってまいりましたので新たな商品の開発を常々心がけているのですが、頂いた絞り染めのハンカチは生地もしっかりとしていて絞り染めならではの味わいがあって、このハンカチの雰囲気で「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の新商品が出来ないか、と考え早速に寺田さんに相談をもちかけました。「そのハンカチは永川軍次さんという方が作っておられます。ご紹介いたしますので直接ご相談されてはどうですか」とおっしゃっていただき四月の初めに永川軍次さんの工房をおたずねしました。
 まさに職人気質そのもののような永川軍次さんは弊店の依頼を快く引き受けてくださり、何をどう作るかについてはあらためてご検討いただくことになりました。弊店としてはハンカチ、風呂敷、なども是非と考えましたが夏に向かう季節柄、まず最初にTシャツの制作をお願いしました。そしてこの七月、「丸太やオリジナルコレクションコンサート」に絞り染めのTシャツが出来上がったのです
 今回、長田けい子さんにも初めてローケツ染めでTシャツを作っていただきました。以前よりTシャツを藍染めで作っていただいている芳賀信幸さんの作品をふくめ一挙公開いたします。絞り染め、ローケツ染め、藍染め、どの技法も遠く過去にさかのぼって日本人の衣服を彩ってきた伝統ある染色技法です。まさに、Tシャツという現代の衣服にどう伝統の染色技法がよみがえるのか是非お確かめください。