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 弊店が販売している反物は当たり前のことながら着物や羽織、コートにお仕立てする、つまり和装のためにお求めいただいているのですが、時おり洋装のためにお買い求めいただくことがあります。それが染物であれ織物であれ、着物地には洋服地にはない色、柄、味わい、風合いがあり、それをお気に入ってお選びいただくのですが、もともと和装のための生地ですので洋服地のような広巾ではありません。ですから洋服にお仕立てされる場合、デザイン、縫製に特別の配慮が必要です。お客様から着物地を洋服に仕立てるご相談をお受けしたとき弊店では「洋服工房アトリエ クロサワ」の黒澤正治さんをご紹介しています。
 黒澤正治さんとの出会いは震災後、間もない頃に弊店のお客様が旅先で買い求められた絵葉書の植物画がとても素敵で、その作者にお電話をされてお近づきになられ、とても多芸な素晴らしい方です、と教えてくださったのがきっかけです。弊店二階のギャラリー響で個展を開かれたら、とお薦めくださいました。後日、自作の植物画を携えてお越しになられた黒澤正治さんは実直なお人柄が挙措に滲み出ていて、その作品もまた丹念に描きこまれていました。震災の直前に黒澤正治さんは姫路市在住の歌人で随筆家の川口汐子さんの随筆集「花逍遥―文学に見る花」の各編に花の絵を描かれ出版のために原画を神戸新聞会館内の神戸新聞総合出版センターに預けられましたが、直後、震災で神戸新聞会館が倒壊、黒澤さんは預けた原画がすべて灰燼に帰したものと諦められたのですが奇跡的に作品はすべて無事だったのです。その原画展を弊店で開催していただくことになりました。
 黒澤正治さんの本業はテイラーで叩き上げの仕立職人です。ご縁をいただいて以来、お客様から着物地で洋服のお仕立のご相談を受けると黒澤正治さんをご紹介いたしました。丸太やオリジナルコレクションコンサートの着物はバイオリンやピアノがモティーフになっていますので演奏家の方からステージ衣装に、とお求めいただき何度か黒澤さんに仕立てていただきました。最近も大島紬をスーツとスカートのツーピースにしたり雨コートでレインコートを作っていただきましたがお客様にはデザインがお洒落で縫製がしっかりしていて要望を丁寧に聞いていただけるということで大変喜んで頂いています。
 黒澤正治さんのアトリエは兵庫県多可郡多可町にあります。多可町は西脇市からさらに北に上がったところで多可町には震災前に二度「ココロン那珂」という公園に子供連れで遊びに行きました。風光明媚な町で山田錦という酒米の産地として有名です。ヴェルディーホールというホールもあります。黒澤さんとお知り合いになってからは多可町に行っていないのですがいつかまたお伺いしたいと思っています。黒澤正治さんはテーラーとして超一級の方ですが驚くほど多芸な方で絵がお上手なだけではなく短歌、詩の創作、コーラス、と幅広くご活躍です。その多彩ぶりは黒澤さんが自作されているホームページに面目躍如としています。丸太やのホームページにリンクされていますので是非ご覧ください。着物のリフォームもなさっておられますので興味のある方はお気軽に弊店にご相談ください。