新年明けましておめでとうございます。
 昨年は格別のご愛顧を賜り心より御礼もうしあげます。
 本年も相変わりませずご厚情の程よろしくお願いもうしあげます。

 年があらたまると不思議と心もあらたまるものです。往時、私共の業界では新年早々に京都の問屋で一斉に「初市」が開かれそれぞれのお店を訪ねると入り口に門松、奥には正月飾りも賑々しく黒紋付の羽織袴で出迎えてくださる社長様と新年のご挨拶を交わし朱墨で清々と「お年玉特価」と書かれた会場でご祝儀の仕入れをしたものです。翌日には「初荷」とやはり朱色で書かれた札が貼られた荷物が届き、さあ今年もがんばるぞ、と早速その商品を持ってお客様のお家に新年のご挨拶におうかがいしたものでした。その荷物には「胴裏」とか「襦袢」も一緒にお持ちして「ご祝儀の初絹に」とおすすめさせていただきました。
 あれから三十年も経つとそれはもうとっくの昔話であり夢物語でもあります。いつの頃からか京都の問屋で「初市」が開かれなくなり「初荷」の札も見なくなりました。「初絹」という言葉をご存知のお客様もきっと少なくなったことでしょう。それは時代の流れではありますが往時を知るものには一抹のさみしさがあります。せめて「初絹」という綺麗な言葉を残したくて「新春初絹 襦袢の会」を開きます。「バイオリン袋帯」が生まれるご縁を繋いで下さった掛水一男さんが一昨年「シルクブレイン」という会社を興されて襦袢を専門に取り扱っておられます。世の中まだこんなに楽しい襦袢がたくさんあるのだ、というのはそれだけで驚きです。「お年玉特価」の襦袢もご用意いたしました。お手入れ簡単で人気のシルック襦袢も取り揃えております。千客万来の程お願いもうしあげます。