2000.9.1. 京都北山のアトリエにて |
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−楽器をモチーフにきものや帯を作ることはどうですか。 最初は難しいと思いました。きものの世界では余り前例のないことですから。 ただきものの柄というのが型にはまったものが多いですからおもしろいテーマだとは思 いましたけれど。 いざやってみるとやはり難しかったですね。 正直なところ楽器のことはよく知らないものですから。 友人の持っているストラディバリウスのバイオリンを見せてもらったりしました。 注文をいただくたびに今度はどんなふうにしようと考えてやってきましたから初めの頃とは随分変わってきたと思います。 −日展や現代工芸美術展に出品される作品と商品としてお作りになられるきものや帯で は取り組むときのお気持ちは違うのでしょうか。 違います。実際は難しいですがまったく切り離して考えています。 作品はあくまで自分の個性を表現するものですが、 きものや帯というのはお召しになる方を生かすためにあるものですから。 作家が前に出てしまうのは駄目だと思います。 絵もそうなんですがやはり大家と呼ばれる方の絵は実際に部屋に飾るとその部屋が一段 とひきたってくる。 あたりの空気が変わるように。きものもそうだと思います。 着こなしによって着る人の魅力が増すようでなくてはならない。 ただ絵を画く方にも絵かきと芸術家とふたとおりある。 絵かきの絵はたとえ上手に画かれていても魂がこめられていない。 私はやはり芸術家でありたいと思っています。 外に出るときはいつもスケッチブックを持ちあるいていますし、 寝ているときもたえず構想を練っている、 そういう意味で24時間ずっと仕事をしています。 −先生にどれくらいたくさん帯を染めていただいたか数え切れないぐらいですが お求めになられたお客様は皆さんとても締め易い、 色々なきものと組みあわせてお洒落を楽しめる、 とおっしゃって下さいますが今回の個展ではどんな作品を見ていただけるのでしょうか 。 楽器のシリーズのきものや帯を新たに作りました。 他に私自身の染めたきものや帯、それから染額、 日展に出品した屏風もお持ちします。 −会期中、是非先生にお客様が先生のきものや帯を楽しんでお召し下さっておられるの をご覧いただきたいのですが。 10月7日(土)8日(日)9日(月)の3日間、 11時ぐらいからお店におうかがいする予定です。 その前後は山形に行ったり日展の会場の展示に行ったりしますので。 自分の染めたものをお召しになっていただいているのを拝見することは余り無いことで すから楽しみにしております。 −たくさんの方にお越しいただけるよう声をおかけいたしますので先生もお身体を大事 になさって創作をお続けください。 |