やまびこが聞こえる 但東町の物産展

と   き 6月13日(日)〜20(日)

と こ ろ 弊 店
 南京町に有る「箸屋」というお店を御存知ですか。 その名の通りお箸の専門店。 お箸は日本人にとって一番身近な道具だからもっと大事にしたい、 と大田淳子さんが始められたお店です。 その大田さんから「但東町の織元さんがモノづくりで苦労されているので相談にのって あげて下さい」 と紹介されたのが兵庫県出石郡但東町今出敏男さんでした。 もうかれこれ4年前のことです。 御多分にもれず「きもの離れ」でちりめん産地は大変で生地をきもの以外に使う道はな いか、 と商品開発に取り組んでおられるのですが なかなか売れ筋の製品が出来なくて小売店の意見を聞かせて下さい、 とたずねてこられました。 以来年に二、三度新製品をたずさえて呉服屋のとりとめのない感想に熱心に耳を傾けて くださいます。 この4月初めにも「おみやげです」 とチューリップと入浴材を持ってきてくださいました。 「4月17日から但東町でチューリップまつりがあるんです。 たんぼ一面に百万本のチューリップを咲かせて今年はドラエモンを描きます。 是非見にきて下さい。 入浴材は私もメンバーの『案山子』というグループで作ったんですが結構好評で一度使 ってみて下さい。」 といつもの元気な声。 チューリップまつりは店のコンサートと重なって残念ながら見に行けませんでしたが、 入浴材は大根や蓬の香りがさわやかで湯上がりも気持ち良く、 後日電話で「パンフレットを見せて頂いたらバラのジャム、 とか絹のゆかた、 とか色々作っておられるのですね。 一度弊店で但東町の物産展をされませんか。」 ともちかけました。 「町の観光協会に話したら、 丸太やさんのご迷惑でなかったら喜んで、 と言われました。」とのご返事。 「一度但東町に遊びにいらして下さい。」 とお誘いを受け5月中旬に行ってきました。
 神戸からは舞鶴自動車道を福知山で下りて国道9号線、 426号線を乗り継いでほぼ2時間、 但東町自慢のシルク温泉(地下1100mの古代花崗岩から湧き出る高成分温泉) のある但東自然ふれあいセンター「やまびこ」 で但東町観光協会の上田恭三さんと今出さんにお会いしました。 上田さんは但東町が9年前に研究を始め5年前に商品化に成功した「絹ゆかた」 の普及に取り組んでおられます。 但東町は丹後に隣接する絹織物の産地で最盛期には全戸数の半分が従事されていたそう ですが 現在も百数十戸が織物業にたずさわっています。 残念ながら時代の趨勢で衰退の一途で、 何か新しいものをと市場調査をされたところ若い女性は「きもの」 には若干拒否反応があるが「ゆかた」には興味を持っているという結果で、 だったら「絹」で「ゆかた」を作ってみようということになったそうです。 試行錯誤のすえ出来上がった「絹ゆかた」は絹独特の柔らかで 艶のある風合いと木綿のシャッキリ感を合わせ持つ着心地満点の出来ばえで 特許もとられました。 柄はオーソドックスな古典柄ですが木綿地にはない可愛い星や涼しげな流水の地紋が 生地に織り込まれていて「ひと味違う」お洒落なゆかたです。 「木綿のゆかたと比べていただくと皆さん絹ゆかたを選んで下さいます。」 と上田さんは自信満々でした。 弊店でも是非お客様にお薦めしましょうとお約束しました。 他にも但東町ならではの特産品が色々ありました。 「桜ジャム」は色の綺麗な桜の花びらだけを選んで作ったジャムですが 着色料は使っていないのにとっても鮮やかなピンク色で味も程よい甘さです。 「但馬あめ」は昔ながらの手作り製法にこだわったあめで なめているとじんわりまろやかな甘さが口いっぱいに広がりました。 大粒の梅を自然塩と紫蘇で漬けた「梅干し」。 大根3本が一袋に詰められた「切り干し大根」。 今注目の「竹炭」「木酢液」。 大根と蓬を乾燥させた「入浴材」はくせになります。 勿論ちりめんをいかしたコースター、 テーブルセンター、 タペストリーや地元の染色家が手染めした染織品もたくさんあります。 ひとしきり特産品を紹介して頂いた後 織物作りに取り組まれている渡辺一芳さんのお宅に伺うことになりました。
 昔は林道だったという山間を切り開いた道をくねくね車にゆられて行きました。 渡辺さんの所では糸に縒りをかける撚糸作業からなさっておられて撚糸工場、 織物工場の両方を見学しました。 渡辺さんも絹ゆかたを作っておられるのですが「洗濯しても縮まない、 シワがいかない、 いいものです。」と力強くおっしゃいました。 「今紅梅の組織ができないか研究しているんです。」 ともっともっといいものを作ろうという意欲をもっておられて心強いかぎりです。 産地はまだまだ元気だ、 とホッとしました。 「我々機屋は機が止まったらおしまいです。」 産地がこれからも元気でいいものを作り続けられるようにお手伝いしなくては。
 「やまびこ」にもどって一息いれるともう5時、 「シルク温泉に入って帰って下さい。気持ちいいですよ。」 本当にそういう気分でしたが家で待っている母や子どもを思うとそうもできず 「いつかまた是非」とお別れしました。 但東町の「たぁんと」ある山の精気と人の元気が丸太やにもあふれることを楽しみに。