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『振袖(ふりそで)』 |
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万葉のロマンをかきたてられる歌に額田 王(ぬかたのおおきみ)と大海人皇子(おほあまのみこ)との相聞歌があります。 あかねさす紫野行き標野(しめの)行き 野守は見ずや 君が袖振る 袖を振ったりされると人の目にとまります、とたしなめる額田王に 紫草(むらさき)のにほへる妹を憎くあらば 人褄ゆゑに吾恋ひめやも あまりに美しい貴女だから人妻であるにもかかわらず恋をしてしまったのです、と大海人皇子は告げるのです。ふたりの間に交わされた歌の中に読み取れるのは袖を振るという行為が愛情の表現であるということです。とは逆に「袖にする」という言い回しが相手の好意を拒否することを意味するように、きものの「袖」は腕を覆う衣服の一部、という実用的な役割を超えて、心の内を代弁する象徴的な意味をもっています。 個人の感情を表現することが必ずしも認められていなかった封建社会では、きものの「袖」が内包する感情の明けっぴろげな開放は、子供にしか許されなかったのかもしれません。振りの長い袖を着た女児も、結婚すると長い袖を短く止めて留袖を着ることになったのです。 振袖は、今日もなお若い女性の純粋な美しさにこそふさわしい晴れやかさと華やかさで成人への記念の日を飾ってくれるのです。 |
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