日差しのあたたかさに春を感じる今日この頃です。着物を着るのに一番良い季節がやってきました。気軽なお出かけや、晴の日の席に、これから着物を着る機会がある方も多いことでしょう。日々の暮らしの中に、着物が自然と馴染むようになれば嬉しいですね。
 この度丸太やでは【服部綴工房】の爪掻本綴展を開催いたします。数ある帯地の中でも最高峰といわれているのが爪掻本綴帯です。現在、主な産地である西陣でも作られる数が少なくなり、手織りの本綴帯は手にする機会が少なくなりました。そんな中でも、服部綴工房では若い織り手が増え、活き活きとした新作が次々作られています。今回の作品展では、服部綴工房の新しい挑戦と、次の世代に受け継がれる伝統の技を尽くした帯をご覧いただきたいと思います。
 爪掻本綴は、手織りで作られる最高峰の帯地です。織の技法の中では最も原始的で、模様の細かな部分は指の爪を使って糸を掻きよせて織るため、爪掻本綴と呼ばれています。原始的であるがゆえに、機械では再現できない独自の風合いを持つ、唯一無二の帯地です。本綴帯の独特な風合いは、強く張った経糸に緯糸を、経糸が見えなくなるほどたっぷり織り込むことで生まれます。これにより、しなやかでコシがあり、帯芯を入れなくても十分な強度とハリを兼ね備えた本綴帯の風合いになるのです。本物の綴帯は、使うほどに身体に馴染み、しなやかに身体を包んでくれる最高の結び心地に育っていきます。着物を着て楽しむ方にこそ、本綴帯の結び心地を体感していただけることでしょう。
 この度の作品展では、服部綴工房の様々な本綴帯をお手に取ってご覧いただけます。紬や小紋に合うカジュアルシーンに結びやすいものから、改まった席にも結べる上品なものまで、様々な着物スタイルに合う帯をご用意いたします。三月七日(土)・八日(日)は服部綴工房の服部秀司さんが弊店にお越しくださいます。ご来店を心よりお待ちいたしております。

流水文を大きな構図で躍動的に表現した綴帯。手織りの暈し技法による繊細な色彩表現が見事です。フランス縞の小紋に合わせて余所行きに。
波の間を駆け巡るうさぎの姿を元気よく表現しています。愛らしいうさぎの表情、つぶらな瞳も手織ならでは。上田紬に合わせてお出かけ着に。
紫根で染めた紫色の糸をたっぷり使い、紫根ならではの気品ある紫色を表現した綴帯。朝の霞たなびく空を情感豊かに織りあげています。