秋の風が気持ちの良い季節になりました。ようやく着物を着るのに丁度よい気候になったように思います。着物を着ると、時間の流れも少し穏やかに感じます。気ぜわしい日々からちょっと抜け出して、心のゆとりを感じるひとときを過ごしたいですね。
 秋は紬の風合いが心地よい季節です。この度丸太やでは大島紬メーカー【枡屋儀兵衛】の大島紬展を開催いたします。弊店と枡屋儀兵衛さんとの出会いは六年ほど前になるでしょうか。現社長の上田哲也さんが社長になられる前、とある展示会場で少しお話ししたのが最初です。お若い方ですが、しっかりした考えをお持ちで、大島紬や着物の未来について真剣に考えておられ、誠実なお人柄を感じました。いつかこの方の大島紬を弊店でもご紹介したいと思っておりました。この度その機会を設けさせていただく運びとなりました。
 大島紬は、奄美大島で生まれた絹織物で、数ある紬の中でも最高峰のひとつといわれています。その特徴は、独特な生地の風合いと文様表現にあります。大島紬は軽く、サラリと滑らかで、それでいて程よくハリもあり、身体に寄り添うような着心地が魅力です。模様は糸を防染して織りながら模様を表現する絣です。経糸と横糸の絣の点を織りながら合わせることで、精緻で繊細な模様を表現しています。
 大島紬はそのブランド性から様々なメーカーが作っており、千差万別です。その中で、枡屋儀兵衛はどのようなこだわりを持って大島紬を作っているのでしょうか。そのお話しをお伺いしてまいりました。
 枡屋儀兵衛は京都に本社を構え、主に奄美大島でオリジナルの大島紬を制作しています。江戸時代に京都の呉服商として創業し、問屋業を経て大島紬のメーカーへと転身し、現在に至ります。お客様に近い立場の呉服商をルーツに持つことから、品質はもちろんのこと、お洒落に着こなしていただけるよう着物を着る人の目線を大事にしているそうです。
 特徴的なデザインは、すべて枡屋儀兵衛のオリジナル。伝統的な技法を駆使しつつ、どこか程よい抜け感があります。大島紬というと、場合によっては技法の高度さばかり目立つような仰々しいものもありますが、枡屋儀兵衛の大島紬は技術力を誇示するよりも、お洒落に着こなせることを第一にデザインしています。伝統的なデザインもどこかに新しいセンスを取り入れ、モダンなデザインも華美になりすぎないようバランスを守るのが枡屋儀兵衛流。創業以来、ファッションの先進都市・京都で常に新しい感覚に触れ、デザイン力を磨いてきたのです。
 最後に「枡屋儀兵衛の他社とは違う特徴は何ですか」とお伺いしたところ、「検品です」とのお答でした。他にもたくさんのこだわりがありそうなのに、なぜ検品という、ごく基本的なことが一番の違いといえるのでしょうか。それには、現社長の上田哲也さんのこだわりがあるのだそうです。大島紬は産地の組合に検査場があり、産地の検査を通らなければ大島紬の証紙を貼ることができません。そのため、通常はそれ以上の検品をすることは無いそうです。しかし上田さんは、自分たちの商品はお客様の目に触れる前にきちんと自分たちの目で確かめることが必要と考え、奄美の組合の検査を通った商品を社内でもう一度検品するようにしているそうです。組合検査では問題なしとされても、お客様の目線で見ると気になるところがある場合もあります。作り手としての目線だけでなく、お客様の感覚に近い目線でも商品を見ることで、品物の良し悪しを見極める感覚を養い、次のモノづくりに活かしていくのです。最も基本的なことだからこそ、真剣に取り組む。その姿勢に、枡屋儀兵衛の誠実さを見る思いがしました。
 この度の作品展では枡屋儀兵衛の最高級大島紬から、気軽にお召し頂けるリーズナブルな縞大島まで、色柄も価格も多彩にご用意いたします。ぜひ実物をご覧ください。そして、ぜひお手に取って、この風合いを体感してみてください。きっとお気に入りの一点にお出会いいただけることと思います。ご来店を心よりお待ちいたしております。

11月5日(月)〜9日(金)10時〜15時
中学生が弊店で職業体験します ぜひ応援してあげてください!

―麻衣子より―
 枡屋儀兵衛さんの大島紬をたくさん見せていただいた中で、私が一番いいなと思った着物は、一見すると無地のようにも見えるシンプルな大島紬でした。素敵な模様の大島紬がたくさんある中で、なぜか私はこの無地感の大島紬に惹き付けられました。お話をお伺いすると、この大島紬は無地ではなく、細かな十字の絣が詰まったものでした。深みある色合いも泥染の漆黒色と正藍染の藍色が重なり合って生まれたもので、匠の技が凝縮された逸品でした。
 とてもさりげない、シンプルな着物ですが、見る人を惹き付ける不思議な魅力のある着物です。
―弦より―
 どんなに高度な技を駆使した絣模様も、模様ばかりが主張しては帯が合わせづらく着こなしにくい着物になってしまいます。本当に良いものは、技を感じさせない自然体で美しいもの。この大島紬を見たとき、その洗練されたデザインの美しさに心惹かれました。切子硝子をモチーフにしたデザインは、モダンなようで、時代を越えた普遍的な美しさのようにも感じます。緻密な絣合わせや、細かな色の使い分けなど技を尽くしつつ、それを感じさせないところが枡屋儀兵衛の大島紬の魅力です。

霞横段の大島紬に幾何学模様の
博多帯 都会的でスタイリッシュな装い
石畳柄の大島紬にオリーブ柄博多帯
街歩きで軽やかに着こなしたい
星柄の大島紬にカラフル名古屋帯
クリスマスパーティーに
大島紬「華かすり」 大島紬「華かすり」 大島紬「ゴールドチェーン」 白大島「雪輪」