夏の気配が日に日に増していますね。今年は春の花が咲くのも早く、季節が過ぎていくのがとても早く感じます。一昔前は着る時期が短いとされていた単衣や夏の着物ですが、昨今は気候に合わせてお召し頂けるようになってきました。一年の半分ほどを占める単衣・夏の季節。着物を着てお出かけしたくなる楽しい季節でもあります。
 この度丸太やでは、小千谷の染織家・樋口隆司さんの作品展を開催いたします。雪国である新潟県の小千谷ですが、古くから夏の着物『小千谷縮』の産地として栄えました。雪がもたらす湿潤な空気が織物に適し、全国でも有数の織物産地となったのです。樋口隆司さんは小千谷の伝統を受け継ぎ、現代の新しい感性を重ねたオリジナリティあふれる小千谷縮と小千谷紬を制作されています。
 樋口隆司さんの創作のポリシーは、「着て楽しむ着物をつくる」こと。作ることだけで満足するのではなく、着ることを楽しんでいただける着物、お召しいただく方の暮らしをより豊かにする着物を目指し、着物の質感や色、柄を考え続けておられます。樋口隆司さんは、いつも全国の着物愛好家の方々から話を聞き、実際に着物を着る方が求めているものを感じ、それを作品に反映させているそうです。今回はこれまで使わなかった鮮やかで爽やかな色にも挑戦されたそう。「今まで経験のなかった色だから、染めるときはドキドキした」という、樋口さんの新しい挑戦を作品から感じていただければ幸いです。
 五月十八日(金)から二十日(日)の三日間の期間限定開催です。期間中、樋口隆司さんも弊店にお越しくださいます。ぜひご高覧ください。ご来店を心よりお待ちいたしております。

小千谷縮の技法を絹に応用した絹織物です。「夏ひとえ」といい、五月から九月までの幅広い時期に着ることができます。襦袢や帯・小物のコーディネートによって季節に合わせた着こなしができる着物です。その名のとおり、湯の中で揉んで仕上げられた生地の風合いは柔らかで、羽衣のよう。それでいて紬らしいコシもあり、着ると滑らかで美しいシルエットに。適度に落ち感もあり、単羽織などにもおすすめです。
麻で織られた夏の着物です。しなやかな風合いと肌触りのために、強い撚りをかけた麻糸を織り、湯の中で揉んで仕上げをします。「シボ」と呼ばれる凹凸のある生地が特徴です。汗をよく吸い、すぐ乾くので、ずっとサラサラした着心地。通気性がよく、風に当たると着物を空気が通り抜けていくような感覚があり、「風を纏う着物」ともいわれています。
小千谷縮と並ぶ小千谷の代表的な織物・小千谷紬に、縮緬加工を加えた絹織物です。単や袷の着物としてお召しいただけます。落ち着きのある紬の風合いに、コシのある縮緬の風合いを加えた生地は着心地がとてもよく、ほとんどシワにもなりません。カジュアルな着物として普段着に、また無地感のものは少し改まった装いにも。
男性の着物にもおすすめです。