日本は紬の宝庫です。全国各地で、その土地の風土や、作り手の思いが込められた、都市それぞれ固有の織物が作られています。結城紬や大島紬のように有名でなくても、それぞれにこだわりを持った逸品があるのです。
 この度弊店でご紹介するのは信州の【三才山紬(みさやまつむぎ)】と能登の【士乎路紬(しおじつむぎ)】です。どちらも作られている量が多くなく、なかなかお手に取ってご覧いただける機会のない紬かもしれません。ですが、その風合い、着心地は、全国どこの紬と比べてもけして引けを取りません。何より、弊店の女将が惚れこみ、長年愛用してきたものなのです。
 着物というのは、とても正直なものです。着物に込められた作り手の思いやこだわりは、その着物をお召し頂いたときに、着心地や、着姿の美しさとなって表れます。弊店女将が身をもって味わい、自信をもってお勧めする逸品紬です。ぜひこの風合いをお確かめください。


三才山紬―みさやまつむぎ―
信州松本で織られている紬織物です。草木染にこだわり、胡桃や漆など身近で得られる山野草を染料に、繊細で味わい深い色合いを表現しています。経糸に生糸、横糸に紬糸を織り込んだ、ふっくらした風合いと滑らかな肌触りが特色です。

士乎路紬―しおじつむぎ―
昭和50年に能登で生まれた紬織物です。高分子工学専門家の水島繁三郎氏が「日本で最も着心地の良い織物を作りたい」との思いで生み出したもので、手引き真綿糸を用いるなど素材にも織にもこだわりぬいた着心地重視の着物です。

 この着物には「街の明かり」という題がついています。栗とカリヤスだったかと記憶しているのですが、草木染のぬくもりのある色柄に惚れ込んで求めたのは、三十年程以前のことです。
 「結城紬と同じ手引きの真綿糸を使って織られているのですよ。」と、当時の担当の方から説明を受けて、着物を着始めたばかりの身には、ちょっと贅沢だな、と思いつつも、包み込まれるような着心地が気に入って、私の冬の定番着物になりました。
 最初のころは、赤い絞りの染帯を合わせて着ていましたが、横山喜八郎さんの染めて下さったバイオリンの帯と出会ったとき、この紬のパートナーは、この帯になりました!

【きものサロン】2017-18秋冬号
士乎路紬の特集が掲載されています。
 私が生まれて初めて、自分で、「コレが欲しい!」と思って求めた着物が、三才山紬でした。玉ねぎと藍で染められた横段ぼかしの着物です。「勝負着物」とでも言いましょうか、何か自分にパワーをくれる着物です。
 こちらの、山桜や栗で染められた淡い色合の三才山紬は、きもの季刊誌「きものサロン」で呉服屋の女将さん特集があって、取材を受けることになった時に、せっかくだから、と新調した記念の着物です。
 三才山紬は、紬ならではのざっくりとした着心地と、絹糸の艶やかさ、しなやかさが生きているというのが素晴らしいです。そして、私が今迄に着たものの中で、一番丈夫です!私の着物は、仕立て屋さんに呆れられるほど、裾や袖付けがすぐに傷んでしまうのですが、三才山紬は、二度三度と洗い張りして、さらに着心地が良くなるという優れものです!

士乎路紬 三段十字絣
淡い生成り色に、朱色の特徴的な十字絣が並ぶ一品。斜めに連なる絣模様は仕立てあげると独特のリズム感となって表れます。他ではなかなか見られない個性的なデザインが魅力です。
士乎路紬 よろけ十字絣
落ち着いた深緑色の手引き真綿糸地に、小気味良く揺れるよろけ十字絣の模様が楽しい一品。シックな雰囲気の中に遊び心も合わさった、大人のお洒落着です。

三才山紬 縞 上溝桜染
上溝桜という桜の仲間の枝で染めた淡い桜色が美しい一品。花が咲く直前の、花の色素がたっぷりと枝に集まったときに剪定した染料でなければ色が出ません。花の命を頂いた貴重な桜色です。
三才山紬 暈し横段 山胡桃・山漆・玉葱・栗染
深い茶色に、光が射すように暈しの横段が織られたお洒落な一品。仕立てると横段模様が心地よいリズムを刻みます。四種類の草木の色が複雑に重なり合った深い色で、秋冬に向く色合いです。

士乎路紬 五色格子
五色の多彩な色が重なり合ったカラフルな一品。異なる色同士の重なりにより、五色で収まらない色彩の豊かさが魅力です。手引き真綿糸のほっこりした風合いと相まって、温かみのある着物です。
士乎路紬 縞大市松
縞の重なりで大きな市松模様を表現したお洒落な一品。モノトーンで構成されたスタイリッシュな着物です。色を足さずにシンプルに着こなすもよし、帯締めなどに季節の色を添えても素敵です。

三才山紬 格子 桑・玉葱染
玉葱の皮で染めた明るい黄色が鮮やかな一品。草木染ならではの、太陽の恵みがそのまま色になったような、温かみのある優しい色合いです。気軽なお出かけなどカジュアルな着こなしにお勧めです。
三才山紬 無地 栗・渋木・藍染
紬の無地は少しカジュアルな色無地の感覚でもお召しいただけるもので、エレガントな美しさがあります。この反物は単色のグレーのように見えますが、栗、藍、渋木の色が重なり合った深い色です。