「暑さ寒さも彼岸まで」といいますが、秋の彼岸ももうすぐです。この頃は真夏の暑さも少し落ち着き、過ごしやすくなりました。着物を着て楽しむには、これからの季節が一番いいですね。九月は単衣の着物を着る時期。裏地を付けずに仕立てる単衣は軽やかで、単衣の着物が一番好きという方もいらっしゃいます。以前は六月と九月にしか単衣は着られないと言われていましたが、近年はより幅広い季節にも着ることができるようになりました。着物の生地も単衣専用に作られたものも登場しています。
 この度丸太やでは【真綿と木綿の新感覚きもの 結城「綿棉(わたわた)」展】を開催いたします。あまり「綿棉」という名前は聞きなれないのではないかと思いますが、とっても素敵な着物です。その特徴は三つ!

(1)絹の真綿糸と木綿糸のハイブリッド着物です
 綿棉は、一般的に高価だといわれる結城紬をもっと気軽に着ることができるように、という思いで生まれました。「綿棉」の『綿』は結城紬の真綿糸、『棉』は木綿糸のことです。つまり「綿棉」は絹の真綿糸と木綿糸を合わせて織り上げたハイブリッド着物なのです。経糸は全て結城紬の真綿糸。緯糸は真綿糸と木綿糸が半分ずつ織られています。質感は木綿が入っているとは思えないほど柔らかい手触りで、一度着ると虜になる心地よさです。

(2)単衣専用着物です
 綿棉は裏地を付けずに仕立てる「単衣専用」の着物です。そのために、木綿糸に撚りをかけて縮加工をしています。縮加工により、真綿糸を主にしながらさらりとした肌触りになっているのです。絹の真綿糸はほとんど撚りをかけていないので、やわらかな絹の風合いがそのまま活かされています。真綿の質感を残しつつ、単衣に向くシャリ感を生み出しているのです。

(3)気軽に着られるカジュアル着物です
 「綿棉」は最もカジュアルな着物です。普段のお出かけなど、紬の感覚で日常の中で気軽に着こなしていただけます。縞や格子柄を基調としたものや、シンプルな絣模様のものが多く、名古屋帯・半幅帯・洒落袋帯など、帯との取り合わせも自由自在です。綿棉は木綿糸が織り込まれているため、着用シーズンも一般の単衣着物より長い期間お召いただけます。お召しになるおすすめ時季は真冬と真夏以外の季節。秋は九月ごろから十一月頃まで、春は四月ごろから六月ごろまで、気候に合わせてお召ください。女性だけでなく、男性の着物におすすめです。明るい色調のものや、絣柄のものまで色柄が豊富にありますので、これまでの男の着物には無いおしゃれなものができます。

 この度の作品展では「綿棉」のほか、袷の着物にもオススメの結城紬や、素朴な風合いが素敵な結城八寸名古屋帯など、多彩な作品をご用意いたします。結城紬の産地では、高い技術を駆使することはもちろん、何よりおしゃれで着心地の良い着物を作るため、日々モノづくりに取り組んでいます。この度ご紹介する着物たちも、実際にお召いただくと、その良さを一番感じていただけるものばかりです。ぜひ実際にお手に取っていただき、風合いを感じてみてください。
 皆様のご来店を心よりお待ちいたしております。