昨年夏、「京都着物サローネ」という着物メーカー合同展示会にお誘いいただき、会場の『みやこめっせ』に伺いました。会場では各社新作やこだわりのコンセプトの商品を紹介されていて、華やかな雰囲気でした。
 その中に、ひときわ目を惹くブースがありました。白を基調としたブースにシンプルなディスプレイ台。その上に、素朴な、しかし人を惹き付ける何かを放つ帯が、そっと置いてあったのです。その空間は見事に調和が取れていて、華やいだ会場の中でただ一箇所、落ち着きのある自然な場所になっていました。
 それが京都の老舗問屋・千藤(ちとう)と弊店との最初の出会いでした。
 後日、京都西本願寺そばの千藤ショールームにお伺いしました。ショールームもまた白を基調とした空間。窓からは風に揺れる柳の緑が見え、彩りを添えていました。微かに流れるBGMはシューマンのピアノ曲。そして、その中に置かれた帯と着物。ここにあるものひとつひとつが、ブレンドされ、この空間を上質な場所にしていました。

 案内してくださったのは社長の千藤竜也さん。単にモノをつくるだけでなく、人と空間を有機的に繋げるようなものをつくりたいと考えられています。
 千藤オリジナル帯は、従来の一般的な帯とは一線を画しています。その特徴は立体的な「点」と「線」。
独特な糸使いと織により、布の上に、こんもりと粒や線が現れているのです。西陣織の帯の多くが紋紙やコンピュータによって模様を織り出しているのと違い、千藤の帯は織り手の感覚による手織り。強く撚られた糸や、太くやわらかな真綿糸など、異なる糸を自在に操り、機械にはできない独特の質感を生み出しています。 デザインの基本は点と線、そしてその組み合わせによる面。具象的な文様を描くことなく、糸の質感や立体感のみで織り上げられた帯は、その奥にある織り手の心をやさしく伝えてくれます。
 音楽鑑賞が趣味で、家には蓄音機もあるという千藤竜也さん。音楽についても話が尽きませんでした。千藤オリジナルの帯の魅力は音楽にも重なります。一本一本の糸が布の上に浮かんでは消え、幾重にも重なり合いながら表情を醸し出す帯。それは音楽のアンサンブルが、いくつもの音のブレンドで美しい音楽を紡いでいく様を連想させます。音楽に無駄な音がひとつも無いように、糸にもそれぞれ意味がある。限りなくシンプルな帯だからこそ、糸と糸とのハーモニーが聴こえてくるように思えます。
 ものづくりにこだわり、ディスプレイにもこだわる千藤さん。それは、いいものを味わう環境、ゆとりある時間、私たちを取り巻くすべてが、着物を着ることの喜びに繋がるという思いからです。カジュアルな着こなしで気軽なお出かけにも、大切な人を心からもてなすときの装いにも、様々な暮らしのひと時を上質に変える帯。他に無いこの質感にぜひ触れてみてください。
 皆様のお越しを心よりお待ちいたしております。

袋帯
「キュービックシルキー」

着物:型染小紋着尺
八寸名古屋帯
「MEBAE-DOT」
八寸名古屋帯
「サザレサザレ」

八寸名古屋帯
「DNA9」

着物:上溝桜染三才山紬
袋帯
「クロスシルバーポイント」
袋帯
「迷路図ベーシック」

八寸名古屋帯
「HY200」

着物:型染小紋着尺
八寸名古屋帯
「2階層パレット」
八寸名古屋帯
「HY300サザレ」