|
日本のものづくりの現場で問題になっているのが後継者の不足です。優れたものをつくる技術があるところでも、それを受け継ぐ次世代はなかなか育っていないのが現状です。しかし、いつの世も希望が消えることはありません。着物の文化が生き続ける限り、新たに着物に携わる人も必ず生まれるのです。 山口和市郎(わいちろう)さんは京都・西陣で代々織屋を営む老舗の四代目。先代から受け継いで以来、帯ひとすじ。そんな山口和市郎さんの後継者が、山口行子(のりこ)さんです。和一郎さんのお嬢さんである行子さんは、小さい頃から父・和市郎さんの仕事を傍らで見て育ち、いつしか跡を継ごうと思われたのだそう。現在は両親と家族三人で帯屋を切り盛りしています。
そんな行子さんを、あたたかい眼差しで見守る和市郎さん。「これからは女性が楽しく着物を着る時代。娘には私に無い女性ならではの感性がある。彼女なりの新しいものづくりが、これからの時代には必要なんです」という言葉の奥に、共に帯づくりに携わる者としての信頼が垣間見えます。 和市郎さんも、新しいものづくりにずっと取り組み続けてこられました。時代に合わせて、つくる帯も変わってきたそうです。「着物文化は日本の伝統ですが、本質的にはファッションであり、時代の移り変わりと共に変化していくものです。柄のモチーフは伝統的なものでも、デザインや配色は常に新しくなくてはなりません。伝統とは、新しいものへ挑戦し続けた結果なのです」と語る和市郎さん。帯屋として、着物を愛する方々に求められる帯を長きにわたってつくり続けてきたという自負を感じました。 弊店と山口和市郎さんとの出会いも、新しいものづくりがきっかけでした。弊店が音楽をモチーフにしたオリジナルの着物を制作しようとしていたころ、当時はそのような着物は無く、制作に協力してくれるところも多くありませんでした。そんなときに帯の制作を申し出てくださったのが山口和市郎さんです。和市郎さんは弊店オリジナルのために一からデザインを起こし、何度も丁寧に調整を重ねてくださいました。そして生まれたのがバイオリン柄の袋帯と、音符柄の京袋帯です。 伝統に甘んじることなく、常に新しいものづくりに挑戦し続ける山口和市郎さん。その姿勢は行子さんに確かに引き継がれています。この度の作品展では、フォーマルもカジュアルも、これからの時代に求められるお洒落な帯にきっとお出会いいただけると思います。帯ひとすじに生きる親子の物語。ぜひお手に取ってご覧ください。
|
今回丸太やでは約四十点もの帯をご覧いただけます。結婚式やお茶席などに向くフォーマルなものから、お友達との食事会などに結びたいカジュアルなものまで、数多くそろえました。 |