過去に二度、結城を訪れたことがあります。結城紬の産地見学のために。最初は今から二十二年前、弊店で結城紬展を開催するにあたって結城紬がどのように生産されるかを見ておきたかったからです。私たち夫婦と、当時社員だった谷口さん夫婦と、まだ年少だった娘と息子を連れ立って行きました。二度目は京都の紬問屋の研修旅行で同業者の方々と一緒でした。今回、結城を再訪することになったのは結城紬の買次商「龍田屋」の藤貫成一さんとのご縁を頂いたからです。 藤貫成一さんとのご縁は鹿児島の「関絹織物」の関健二郎さんが数年前から「唯一無二の会」という新作発表会を始められたのがきっかけです。東の結城紬、西の大島紬という日本の織物を代表する二大産地で、志を同じくする織元仲間で発表会を立ち上げられたのです。「唯一無二の会」のご案内を頂き、発表会のたびに家内と息子が会場にうかがうようになり、そのつど清新な作風に心を打たれていたのですが、今年の一月の発表会を息子夫婦で拝見させていただいて是非「丸太や」で「龍田屋」の結城紬展を開催したいと考え、藤貫成一さんにご相談したところ快諾していただいたのです。 去る八月二十七日、神戸空港から茨城空港へ降り立ったのですが、空港には藤貫成一さんご自身が出迎えてくださいました。染元、織元など四箇所の工房を順番にお連れ下さった車中、以前に結城を訪れた折の思い出話とかで話が弾みました。結城紬を織り上げるための真綿紡ぎに始まる各工程を見学させていただき、あらためて手仕事の積み重ねの上に出来上がるのだと感動いたしました。 最後に「龍田屋」さんのお店におうかがいして藤貫成一さんが創作された結城紬の数々を拝見させていただきました。実は私は、作品を見せていただくのは、そのとき初めてだったのですが、家内や息子夫婦が是非「丸太や」のお客様に見て頂きたいと切望した気持ちが痛いほど分りました。かつて見たことのない清新極まりない作風なのです。まさに今の時代、これからの時代の結城紬なのです。結城紬の伝統と技法に立脚しながら、その名声に安住しないで、キモノを着てお洒落を楽しみたい、着心地を味わいたいという、今お客様が求めておられるキモノ創りに挑戦しようとする気合に溢れているのです。思わず私は「結論を申し上げます。一言、素晴らしい」と藤貫さんに申し上げました。 二十一年前「伝承 結城紬」を開催して以来、今日まで「丸太や」が結城紬を本格的に販売することはありませんでした。やはり「高嶺(高値)の花」であらざるを得ませんでした。しかし来る九月二十日(土)より二十八日(日)まで「丸太や」店内にて開催いたします「龍田屋 藤貫成一 結城紬展」はお客様にお買い求めいただける絶好の機会であると確信します。ご来駕ご高覧のほど心よりお願い申し上げます。 三木 久雄 |