現代屈指の本友禅染作家である木戸源生さんとの出会いを頂いたのは平成19年の春のことでした。4月に京都市美術館別館で開催された日本染織作家展のご案内を頂き会場を訪ねると木戸源生さんの訪問着「萌春」は京都府知事賞、訪問着「早春」は京都市長賞をそれぞれ受賞されていました。本友禅染で制作された作品のどちらにも深く感動いたしましたが、日本染織作家展の第30回を記念して過去の受賞作品が陳列された別室に展示された木戸源生さんの作品に圧倒されました。それは糸目友禅という筒描きの極致とも言うべき微細な線描の訪問着で、本友禅染という最も伝統的な技法を用いながら現代の最先端の感性に溢れた作品だったからです。  5月初旬、木戸源生さんが来店され、糸目友禅でモダンなデザインの着物と帯を集中して制作しているので弊店で発表したいというご要望でした。勿論、即答で喜んでお受けいたしました。木戸源生さんは本友禅染の華麗を極めた作品や素描友禅の伸びやかな作品も素晴しいですが、糸目友禅だけの作品は、恐らく、木戸源生さんを措いて他の如何なる染織家の追随を許さない独自の孤高の作品です。ご高覧の程心よりお待ち申し上げます。