年が新たまると、なぜか心も新たまります。気分一新、新たな気持ちで今年も商売に努めて参りますので、どうぞ本年も昨年に変わりませずご愛顧のほど心よりお願い申し上げます。

 新年最初のご案内は「新春新色 色無地別染の会」です。私が「丸太や」に入り呉服屋になった38年前頃は、しばしば色無地のお着物のご注文をいただきました。入学式、卒業式でお母様は皆さん色無地の紋付着物に黒の絵羽織をお召しになって参列されたからです。その他、お祝い事とかお茶事の着物として色無地の着物は無くてはならない着物だったからです。
 当時、色無地の着物のご注文をいただくと必ず色々な紋様が織り出された白生地をお選び頂き、お好みの色を選んでいただいて別染させていただきました。お客様ご自身に色をお選びいただく参考に既製の色見本帳と、「丸太や」が別染した色無地の端切れを採集した見本帳と両方を見比べていただいて色をお決めいただきました。
 しかしいつの頃からか、多分、入学式、卒業式で色無地の着物をお召しになる方がめっきり減ってしまった頃から、色無地のご注文は随分減ってしまいました。さらに色無地の着物は白生地から別染するより既製の染め上がった色無地をお選びいただくようになり、色無地を白生地から別染させていただくことはほとんど無くなってしまいました。
 最近、以前よりお持ちの色無地の着物が派手になったので地味にして欲しいとか、そういうご相談を承ることが多くなり、色見本帳で色をお選びいただいて染め直し、染め替えをさせていただくことが増えました。染め上がって見違えるようになった色無地の着物にご満足いただき、お喜びいただくお客様に接するにつれ、お客様のお好みの色で色無地の着物をお創りすることの大切さを感じるようになりました。
 このたび京絞り染め寺田豊さんのご紹介により、岸辺喜之さんとのご縁を頂戴いたしました。岸辺喜之さんは京都工芸繊維大学蚕糸生物学科をご卒業のあと、浜縮緬の販売部門に就職され、主力の色無地を中心に無地感覚の商品(小紋、喪服、襦袢、八掛、コート、九寸帯)の製造、販売に携われてこられましたが先年独立され、それまで培われた白生地、色無地等の知識、経験、人脈を生かしてご活躍されておられます。
 このたび岸辺喜之さんとご縁を頂戴いたしましたことは弊店に取りまして、従来の流通経路から、より直接に商品が入荷する条件が出来上がったことに他ならず、お客様に対しまして、従来より、より良い商品が、より安価にご提供できることになりました。このご縁を絶好の機会と判断し「新春新色 色無地別染の会」を平成23年幕開けとして開催いたします。


<紋意匠:牡丹唐草 12m>

<紋意匠:桜花散らし 12m>
 ほかにも、小花や華紋などの柄もございます。袷にされる場合の八掛も、通常のパレス無地のほかに、正倉院柄の綾朱子のすべりの良い生地をご提案します。

<規格色無地:平安古今集 16m 共八掛>

<紋意匠:桐竹鳳凰 16m 共八掛>
 ご自分で色を決めるのは苦手、という方には、長寿を表す「菊花」の地紋の色無地を、15色の中からお選びただくことができます。八掛には、「古今集」から、菊の句を、地紋に織り込んでいます。  「鳳凰は、高貴な天子が善政を施した時にだけこの世に現れ、桐の木に宿り、竹の実を食べる」との中国から伝わる吉祥伝説の文様です。

 紋意匠の丹後ちりめんのほか、長浜の鬼古代ちりめんもご用意いたしました。
 ご来駕ご高覧のほど心よりお願い申し上げます。