十二月一日、皇室に慶事のあった同じ日に、弊店にも喜ばしい知らせが届きました。 「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の着物や帯を作って下さっている横山喜八郎さんが第三十三回日展で特選を受賞された、というのです。 思い返せば九年前、平成五年の一月、新匠工芸会の染色家伊砂新雄さんから弊店のことをお聞きになられて個展を開きたい、という申出をいただいてアトリエを訪問したのが横山喜八郎さんとの最初の出会いでした。 京都市立植物園をさらに北へ上がって北山の山裾の邸宅は数日前に降った雪がまだ庭に残っていたのがとても印象的でした。 工房を案内して頂きながらロウケツ染の工程を説明して頂いたあと応接間で日展に出品された屏風や現代工芸美術展で大賞を受賞された屏風、秋篠宮紀子様がアトリエを見学されたおりお気に入られた訪問着などを見せて頂きましたが、 すでに染織界で確固たる地位を築かれた方でありながら、そんなそぶらいは微塵もなく本当の大家はこういう方なのだと深い感銘を受けました。 二月に弊店で開いて頂いた個展には屏風や染額、着物、帯などを出品して下さったのですが弊店のお客様だけではなく先生のご関係の方々、現代工芸美術展に出品される染色家や工芸家の方々もたくさんお越し下さいましたが ある工芸家の方が「横山先生は大変立派な先生で普段なら、おそばに近寄れないぐらいの偉い先生なのですよ」とおっしゃられたのが驚きでした。 そんな大先生に門外漢のコワイものしらずで厚かましくも「バイオリンのきものとか帯を作っていただけませんか」とご相談したら「面白いテーマですね」と答えて下さったのが「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の始まりになりました。 それから八年の間に「丸太やオリジナルコレクションコンサート」の染帯は百本、きものは十点、作って頂きましたがその全てはひとつひとつ新たな創作でした。 この度の横山先生の日展特選という栄えある受賞は丸太やにとりまして大きな喜びでありますとともに光栄の極みですが、既に横山先生の作品をお求めいただいているたくさんのお客様に対しましては、お薦めした立場としてささやかながら自負を感じています。横山喜八郎先生の今後益々のご活躍を心より祈念いたします。 |